『コミュ力の問題ではない』
読んでくださってありがとうございます。ブックマークも嬉しいです!
自己紹介シーンは、勇者のキャラに圧倒的に合わないものだったと思ってください。
●コミュ力の問題ではない
その場で固まる私たちのところに勇者は空気を読まず歩いて寄ってきた。
「ちょうどいいか。エール、朝食は魔王と同じものをもう一人前用意してくれないか。」
そしてそのまま命令口調でエールにそう言った。
「魔王様……。そこの見た目年齢魔王様より年上の人間のように見える何かが、魔王様のペットではないですよね?これは不審者で良いですよね。はい、排除します。」
「待ってー!!一応(認めたくないけど、認めたくないけど)これが一応、さっき話したユーシャ!!」
エールが渋々と言った感じで戦闘態勢を解除する。一方ブールは笑顔を引きつらせていた。
(何か怒ってるのは分かる。けどこいつ、ずっと笑顔だぜ!文章じゃ伝わらないかもしれないけど、ずっと笑顔!お前の表情それしかないのかってくらい!目がずっと笑顔の形なのである意味作画コストが低いのでは?!)
ブールの表情に思考が現実逃避を始める。
「魔王様は、いつからそんな趣味が?やっぱり人間は滅ぼしましょう。俺の魔王様の性癖を歪めたなら尚更だ。」
何か怖いこと言いだしたし!!
どう宥めるか考えているとユーシャが私の前に進み出た。何をするつもりなのか。
ユーシャが何か唱えると空中に文字が映し出される。
(……結構万能だな、この勇者。)
「俺は、こういうものだ。よろしく頼む。」
空中に浮かんだ文字は
★★★★魔王のペット★★★★
♡♡名前♡♡ユーシャ
♡♡性別♡♡男
魔王様が大好きで魔界まで押しかけてきちゃった☆押しかけペット
魔王様のことを一生懸命守るために頑張ってるよ!
魔界の皆のことも嫌いじゃないから仲良くしたい口下手な男の子だよ☆
「「「……。」」」
思わず言葉を失った。
「魔王様、そのペットヤバいんで処分しときますね。」
「アッハイ。オネガイシマス。」
笑顔のままレイピアを持ち出したブールを止めることが出来なかった。
いや、だって大分ヤバそうだし。
勇者がブールの攻撃を軽くいなす。
「自己紹介に対して攻撃とは……随分なご挨拶だな。」
「その自己紹介が原因だよ!!」
「何か可笑しかったか?人間界では流行の最先端らしいんだが。」
ナニソレ、人間界怖い。
「た、多分あれですよ!あの男の出身地の辺境の村とかの」
「いや、俺にそれを教えたのは人間界の王家の本家の娘だぞ。」
うわー、人間界ど真ん中。エールのフォローを勇者が打ち消す。
その間もブールはレイピアで斬りかかっているのに、全部いなされてしまっていた。
勇「何がいけなかったんだ?」
魔「どうしてあんな自己紹介を……。」
勇「反省して検討しよう。」
魔「次は『圧倒的』『魔王を守る会』の2本!ん?何この会。」
勇「会長は俺だな。」
魔「え?それ本当?!」