『逃げ道を用意したといっておきながら逃がす気はない』『そして勇者は口を開く』
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●逃げ道を用意したといっておきながら逃がす気はない
「なー勇者ー。」
「どうした?」
「私、お前の過去を探ってみたんだけどさ」
「それは本人を前にして言っていいものなのか?」
「お前が言うか?……とにかく探ったんだけどさ。」
「ああ……。」
「お前一か月前まで生まれた町にいて、しかも弱くて、なのに一か月前に私のところに来たんだろ。」
「……そうだな。」
遺跡帰りだ。
ブールはいない。
だから勇者は嘘をついても私には分からない。
「だけどお前は強いし、色々あったっていうし、旅をしたパーティメンバーだっていたんだろ?そろそろ種明かしをしても良いんじゃないか?」
だけど、きっと勇者に本当のことを言ってもらうにはスキルなんて必要ない。
きっと目をそらさなければ良いだけなんだ。
●そして勇者は口を開く
勇者はしばらく口を閉ざしたままだった。
話したくないんじゃなくて、どう話せばいいか分からないといった感じ。
それが空気から伝わってくるから私は根気強く待つことにした。
しばらくして勇者は口を開いた。
「今の、お前が言う一か月前まで、確かに俺は町にいた。」
それから口をパクパクさせて、言葉を探しているようだった。
「だが、お前が言う一か月は、俺にとってはもっと長い時間なんだ。」
「それは時間の流れが違うところにいたとかそういう?」
どっかの真っ白な部屋かな。首を傾げると勇者はゆるく首を横に振った。
「多分そう言うことじゃない。俺以外は知覚していないだけで……。どちらかというと時が巻き戻った感じだ。」
「時が巻き戻る?」
「ああ。それも俺以外の記憶も状態もすべてリセットして。」
「つまりお前はリセットされてないのか?」
「ああ。だからこのレベルだ。」
俄かには信じられない話だ。正直言って意味が分からない。
けれどこれはきっと突然の話じゃない。
それに勇者の話を聞くと決めたのは私だ。
この口下手の勇者様の話を聞いてみよう。
もしかしたら石板の解読よりずっと面倒かもしれないけど。
魔「さあ口を開け。このシュークリームをつっこんでやる。」
勇「本編に出てきてない菓子を持ち出すのはやめろ。それに食べてたら話せないだろう。」
魔「それもそうか。」
勇「というか、お前、本当に逃がす気ないよな……。」
魔「逃げ道はあるでしょう?ブールもいないし。」
勇「俺に、お前に嘘をつけと?」
魔「さて。逃げる逃げないは勇者の選択だよ。でも、魔王を前に普通逃げるかな?」
勇「魔王に背中は見せられないってか?……まあ良い。その代わりお前も覚悟しろよ。一応勇者が立ち向かってくるんだからな。」
魔「手の内をどこまで晒すつもりかは知らないけど、覚悟はしてるよ。魔王だからね!次回『パパっと説明』……タイトルが!タイトルが軽い!!」
勇「植物性の生クリームより軽そうだな。」




