『太陽の塔』『焼けただれた翼』
●太陽の塔
悪夢に引きずられてはいけない。分かっているから気にしないようにする。
だってあれは夢だ。それも私のものですらない。見た本人が悪夢じゃないと思える夢。
周りからは見えない塔。それが今回の遺跡だった。
回りくどい仕掛けを解いて上に上にと登っていく。不思議な力で飛ぶことが阻害されていて地道に行くしかなかった。
「魔王を飛べなくするとか、どんなダンジョンだよ。」
「製作者が神だから仕方ない。」
勇者の横顔は相変わらずだ。無表情な仏頂面。それでも少し柔らかさを感じるのは、気のせいだろうか。
「勇者。」
なんとなく、手を勇者に差し出してみる。勇者は不思議そうな表情をしながらも迷わず私の手を取った。
そうだ。それでいい。
「うん。満足した!」
「それは良かった……が、なんだ?」
「特に意味はないかな!!」
勇者は怪訝な顔をしていたけれど、少しだけ口元を緩めて私と手を繋いだまま歩き出した。
次の敵がくるまではこのままでいてくれるらしい。
(どうだアカ!お前はこんなことは出来ないだろう。)
夢の中の私に出来ないことが、私には出来るのだと、なんとなく満足した。
●焼けただれた翼
「ここは神の諦念を記した石板の眠る」
「うるさい。」
塔の最上階にいた人語を喋るキメラ。
何かセリフがあったんだけど、その途中で勇者が魔法で攻撃した。
「さすがにセリフの途中で攻撃するのは可愛そうなのでは?」
「厨二病キャラの設定を永遠に語られるんだぞ?」
確かに長そうだけどね?
「許すまじ。その無礼な態度、我が翼は太陽に焦がれ、確かに焼けただれた。しかし我が牙は」
ここでまた攻撃です。勇者容赦ないね?
「実際自我があるかも分からない神の創造物だぞ?倒してもまた同じ状態で復活する系の。」
「逆に救いがない気もするね?」
多分まともに話ができるかも微妙なんだろう。
仕方がないから私も戦闘態勢をとる。とりあえず私が叩きこむより勇者に攻撃させたほうが効率がいい。敵の動きを止め、状態異常を引き起こさせ、勇者の攻撃力を高めて有利そうな属性を付与してやる。
「前から思ってたがお前も大概有能だよな。」
「魔王だからね。」
勇者にそういわれる程度の能力は有していたいものだ。
「神様に言えばこの子も連れて行って良さそうだけどな。」
「お前は自分で作ったほうが速いだろう。」
「確かにそうなんですけどね?」
ていうか
「回復はしてあげるけど、私を囮にしたほうがよくない?」
勇者は答えない。たまに飛んでくる攻撃が私に当たるけど、私にダメージは入らない。むしろたまに回復してやらなきゃいけない勇者の方がダメージをくらっている。だからああいう提案をしたのだけど勇者に聞く気はないらしい。
そんなことをしている間に焼きただれた翼は重い音を立てて地面に沈んだ。
「諦念ねえ……。」
「そんな内容だったか?」
石板の文字をなぞって私は頷く。
「面倒だから神様は空に帰るって話らしいよ。」
「諦念というのか、それ。」
勇「魔王が謎のどや顔をしている。」
魔「は?どや顔?」
勇「そうだ。」
魔「満足してるだけなんだけど。」
勇「それをどや顔というのでは?」
魔「ふむ……。まあいい。そう言ってられるのも今のうちだ。」
勇「は?」
魔「勇者よ、そろそろ重い口を開いてもらおうか?次回『逃げ道を用意したといっておきながら逃がす気はない』『そして勇者は口を開く』」
勇「……まだ本筋は語らんぞ。」
魔「唐突に話されても困るからね。まあ次回は前置きってやつだね。」




