『初めての夜』
●初めての夜
「それで、お前はどうするんだ。」
「魔王城に置けと言っているだろう。」
「嫌だって言ってるんだよ!!」
「まあ、俺のことは気にせずに寝ると良い。」
勇者は私の言葉などどこ吹く風で椅子に腰かけて寛いでいる。
「寝首かかれるか心配で寝れるわけないでしょ……。」
ため息をつきながらそう言うと勇者は目をぱちぱちさせてから真面目な表情で言った。
「大丈夫だ。夜番はしてやる。」
「お前に寝首を描かれる心配をしてるんですけど?!」
そう言うと勇者はキョトンと目を瞬かせた。
「俺はお前を守りに来たと言っただろう。」
そう言えばそんなことをほざいてやがった。私は頭を抱える。
「ていうかお前、私の部屋にずっといる気な訳?」
「とりあえず今日のこの時間からエールとブールに騒がれると面倒だろう。」
そりゃそうなんだけど、どうして私の部下についてこんなに詳しいんだお前。頭を抱えるのをやめて、顔を上げればジッと勇者がこちらを見ていた。
「な、何だ?」
「……いや。」
勇者は緩く首を横に振ると椅子の上で膝を抱える。一応靴は脱いでいるようなのでそこは感心。
「本当に、普通に寝て欲しい。安らかなお前の眠りを守るから。」
「勇者……。」
安眠出来ない原因が何を言ってやがる。
そう言いつつとりあえず、勇者の視線が痛いのでベッドに寝ころんでみる。
(いや、でも不審者いる状況で安らかに眠れるわけなくね?)
全くやってこない眠気。
とりあえず勇者の対処法を考えていると
「おやすみ。」
と勇者の声がして、意識がプツリと落ちた。
勇「次回は次の日からだ。『勇者の呼び方』だな。」
魔「すやあ。」
勇「……健やかに眠って欲しい。どうか、良い夢を。」