『雰囲気が痛々しい』『名前イベントって結構重要なのでは』
最初の話はエール目線です。
●雰囲気が痛々しい
「天候を……。」
城で留守番をしていた私のところにブールが魔王様を運んできたときは驚いた。
魔王様がそこまで疲れるなんて滅多にあることじゃない。レベル50を超えてからは尚更だ。
ブールに事情を聴けば天候を操ったのだとか。さすがにそれは疲れるだろう。魔王様の体をふいて、ネグリジェに着替えさせる。
ベッドに寝かせて布団をかけて……なんとなく目についたウサギのサンドバッグを隣に寝かせる。
ストレス解消効果は期待できるでしょうか?
それらの仕事を終えるとユーシャが眉を寄せて廊下に立っていた。
「どうしました?」
「魔王は具合が悪いのか?」
「少々お疲れのようです。」
「……そうか。」
ユーシャはグッと唇を噛みしめた。
「俺が傍にいてやれば……。」
何に責任を感じているのかは分かりません。というか魔王様たちはユーシャの秘密を暴こうと行動していたので傍にいられると不都合だったはずです。
「別に、あなたはあなたで魔王様のために今日も何かしていたのでしょう。」
「それは……。」
「なら、魔王様が元気になったらその成果を見せてあげてください。」
ユーシャは微妙な表情で頷いた。
●名前イベントって結構重要なのでは
「うぅ……。」
肌に感じるのはいつもの寝具。
いつの間に寝ていたのか。そうだ、天候を操って疲労困憊で……。
「……………………最悪の目覚めなんですが。」
「そんなに疲れているならまだ休んだほうが良い。夜明けまでまだあるからな。」
違う。そうじゃない。
痛む頭を押さえながら上半身を起こす。
ていうか頭痛が痛い。大事なことなので敢えて二重表現していきます。
「寝起きにお前の顔をドアップで見た私の気持ちを20文字以内で答えよ。」
「『近くで見ても案外イケメン』とかどうだ?」
「記述問題は8割マスを埋めるように努力しましょう。」
顔が整ってるのは認めるが問題はそこじゃない。
ちなみに私の気持ちについては当然ながら不正解である。
「なぜここにいる……?」
部屋の前にテントを陣取られているのも問題だが、部屋への侵入を許した覚えはないぞ。
「心配だったからな。」
少し雰囲気を柔らかくして言うな。
「初日に窓ガラスを割って侵入してきたことを忘れたとは言わせないからな?そもそも心配だからって何してもいいと思うなよ?」
「俺としてはただ健やかに寝てほしいだが。」
「お前が睡眠妨害の犯人だが?」
「あと無茶はしないでほしい。」
ぐっ……。
「疲れて、寝たと聞いた。お前がそんなに疲れるなんて、何があった?新しい種族の魔物でも作り出したか?」
確かに作り出す種族によっては同じくらい疲れそう……ってそうじゃない。
「とにかく!大丈夫だから出ていけ。」
「俺はお前を守るために、お前のことは何でも知りたいと思ってるんだが。」
勇者は私に何があったのか話せと要求してくる。
けれど、何故だろう。その言い方に、その理由に、そして……
「お前は私のことを知りたいというけれど、お前のことを全然話さないじゃないか。」
どうしようもなく、胸の下、おなかの上の方、みぞおちのあたりがジクジクと痛んだ。
「名前だって、教えてくれないくせに……。」
知らぬ間に目じりが熱くなる。
勇者は私の言葉に気まずそうに目を伏せた。
「名前を教えあうことにトラウマがあってだな。」
「ピンポイントすぎるだろ?!」
「いや、実際のところ……」
勇者は頭をかいてから私と目を合わせた。
「俺はお前に名前を教えていいのか、お前に名前を教えてもらって良いのか、分からないんだ。」
大体結構好き放題、突っ走る勇者。
だけど今はその瞳が迷子の子供のように見えた。
魔「そういう表情はなんかずるいのでは?」
勇「具体的には?」
魔「罪悪感とかを煽ってくる。」
勇「有効なようで何より。」
魔「次回は『RPGって人に話を聞いて進めることが多いよね』『RPGじゃなくて乙女ゲームだったのだろうか』『大技を使えるのは基本的に強者』です!」
勇「ゲーム……?」
魔「あくまでタイトルなので!」




