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2週目勇者様は魔王ちゃんを可愛がりたい  作者: 星野 優杞
おお、勇者よ!世界を救えなかったとはなにごとだ!
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『今から全力でハグしに行く』

●今から全力でハグしに行く


「とりあえず魔王と俺で手合わせすれば双方に一定の経験値が入るんじゃないか。」

「私とお前で手合わせって……。」


どっちにもダメージ入るじゃないですかー、やだー。


「俺がダメージ喰らったら回復してくれるだろ?」

「妙に信頼しないで?」

「実績があるだろう。」


確かにありますけど!!

一回回復したくらいでそんなに信頼しないで欲しい。


「まあ、お前の攻撃なら80%くらいまでは持ち堪えられるだろう。それで俺が50%くらいでどうだ?」

「確かに攻撃力的にはそれでも良いけど、速さならもう少し付いていけるけど?」

「あくまで攻撃についてだ。速さはマックスまで出していくぞ。」

「あ、はい。」


一応魔王に攻撃をするのだ。しかも魔王が勇者に稽古をつけてもらう形で。事情を知っている者にしか見守れない。

城の試合場に結界を張って、エールとブールに立ち会ってもらう。緊急連絡だけは取れる形になっている。


「俺はお前に明確にダメージを与えたくない。」

「明確に?」

「まあ、不慮の事故的なノリでダメージが入るのは仕方ないかも知れないんだが、剣でお前に斬りかかるのには抵抗がある。」


勇者はビシッと私のお腹を指差した。


「お前、腹とか意外と露出高いしな?!」

「まあそうなんだけどね。」


勇者以外の攻撃なら別に素肌でも弾いてしまうのだが、確かに勇者の攻撃を素肌に直接喰らいたくない。


「じゃあどうするんだ?お前、素手でもある程度強そうだけどそれで私の腹とか殴れるのか?」


斬撃と強打。どちらも長所と短所があるとは思うのだけど。

勇者は少し考える。


「とりあえず俺はお前の行動をマックスの速さで抑えに行こうと思う。」

「つまり拘束魔法か?」


出会った時のように。尋ねれば勇者は首を横に振った。


「物理で、こう……。」


勇者は両手を広げてその後に閉じる行動をした。

つまり……


「超スピードで私を抱きしめにくると?」

「その後ちょっと絞めてダメージを与える。」

「骨くらいは折れそうですね?」


だいぶ嫌なハグである。


「じゃあ行くぞ。」

「ちょっ!!?」


勇者の言葉が終わるか終わらないかの内に勇者の姿が消える。

反射的に地面を蹴り、真横に移動すれば、先ほどまで私がいた所にいる勇者と目が合った。

目が合ったことを悟った瞬間に移動を繰り返す。目が合ってから思考したのでは行動が間に合わない。


「っ!!」


マントを掴まれて強く引かれる。とっさにマントを外して体を縮める。私に向けて伸びた勇者の手が空ぶった。直接触れるのは捕まるリスクが高いのでその手に魔力をぶつけてはたき落す。


「チッ。」


並の魔族ならそれでも手がぶっ飛ぶレベルだ。エールやブールですら骨くらいは持っていけると思う。

なのに勇者は少し痛いくらいなのか。手首を確認のためにグリグリ動かしていた。


そもそも飛行能力が無いなら空中では隙が出来るはずなのに、それが見つからない。


「お前!飛べるのかよ?!!」

「飛べるな。」


呆気からんと答えるんじゃ無い!!

普通は飛行能力って結構会得が面倒なんだからな?


地面を蹴って、空中を蹴って、魔力を放って、どうにか勇者に捕まらないようにするので精一杯だ。


(こちとら息が上がってるのに、向こうは余裕だし!!)


これがレベル差というやつだろうか。


「大丈夫だ、魔王。安心して俺に抱きしめられろ。」

「何に安心しろと?」


ちょっと絞めてダメージを与えるとか言ってただろ、お前。

勇者が再び移動する。そろそろこっちの体力が限界だ。


(少し、この速さには慣れてきたけど……!)


勇者の姿を目で捉えられれば避ける動作を最小限に抑えられる。けれどそれでも体力の消費はある。


「っ!!」

「!!」


勇者の手が髪に触れた。そのまま引っ張られてしまうことを覚悟したけど、勇者は髪を掴まなかった。


(舐められてるのかな!!)


それにちょっとだけイラッとしたので、魔法を発動する。

守ってばっかじゃ勝てないしね!!


地面から黒い水晶を生やして勇者の下から串刺しを狙う。発動が少し遅いからどうせ避けるんだろうけど!!予想通り勇者はそれをヒョイと躱す。


この魔法の良いところは自然発生な所だ。上に水晶を生やすだけだけど、準備さえしてしまえば勝手に発動する。私の意識をそこに割く必要が無くなる。


勇者は反対に水晶が生える時に躱すことに多少なりとも意識を割くことになる。勇者が水晶を躱した先に圧縮した魔力を放ち、勇者の動ける範囲を狭くする。そこに重力魔法をかけて地面に叩き落として……!


「なっ!!」


勇者は私の放った圧縮魔力を避けずにその手で受けて見せる。そして怯む様子も見せずにこちらに飛び込んで


「受けた方が、軽傷ですむと思った。」


片方の腕だけで私を抱えて見せた。


「ぐっ……。」


悔しいけど、ここまでだろう。

体力的にも辛いし。


さあ、絞められて肋骨くらい折られる覚悟はしているぞ。

絞めるなら絞めろ。そう思いながら勇者を見上げれば、彼は目を丸くしていた。

たまにそういう表情するよな?お前。


「今日はこれくらいでいいだろう。」


勇者はそう言ってめちゃくちゃ丁寧に私を地面に下ろした。なんだ、こいつ。


「お前、私の骨を折るんじゃ無かったのか?!今の下ろし方じゃ睡眠妨害にもならないわ!!」

「良いから!気が変わったんだ!!」

(おおぅ。まーたこういう感じ。)


珍しく取り乱してる感じはぬいぐるみ以来だ。

え?大農場で王族を見かけた時?あれとは違う感じなんだなー、これが。あっちは洒落にならないマイナスな感じだからな。こっちはワンチャン突きたくなるような感じだから!


「骨を!折るとか!!魔王様にそんなことしてみろ。呪ってやるからなぁ?!」


口元に笑みを浮かべながら後半を特にゆっくり言ったブールが私の前に立つ。


「とりあえず筋トレの後は魔力補充ですよ!!魔力も筋力もアップです!!」


エールはトレーニングと割り切っているのかヘラヘラしながら液体魔力を私と勇者に渡した。


「一応回復魔法をかけとくか……。」


私がそう言って勇者に魔法をかけようとすると、私の傷と勇者の傷が一気に消えた。


「……ブール?」


ユーシャ嫌いなブールが回復魔法を双方にかけてくれたらしい。

どうしたのかと首を傾げると


「魔王様がユーシャを回復するよりこっちの方がマシです!!」


と叫ばれた。


魔「お前とトレーニングとか疲れるんだが。」

勇「経験値としては結構いいと思うけどな?お前の魔力も肉体も喜びの声をあげてないか?」

魔「エールみたいなことを言いやがって……。次回は『魔王ちゃんのお洋服』『勇者の憧れの相手』だな。一章ではあんまり語られてなかった私の服装が今明らかに!」

勇「あー……そうだな。……お前、あんまり強くミンムーにもの言えないような服装だよな?」

魔「あそこまでセクシー路線じゃない!身軽さ重視なだけだから!!」

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