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命懸けの逃走、人斬りとの出会い

「はっ、はっ、はっ」


少年を抱え走りながら逃げる桜、その後ろに追う西洋の鎧のような外殻を纏った人型。

家に帰る考えも街に行くという発想も、一般人である桜には出てこない。

なにせそんな出来事とは全く会いもしない生活を送ってたからだ。

それでもアドバンテージは少しだけある、それは


「!」

(こっちの角を左に、曲がるっ!)


この街、(さい)(うん)()をよく知っているかいないかだけ。

たったそれだけでも十分、相手が普通の人間なら。

だがそれでもやはり知っているところが多い桜にとっては時間稼ぎになる。

そうなるはずだった。


(おかしい!さっき、変なのが降ってきたのに!なんで人の気配がないの!?)


そう、人の気配もとい人がいる様子すらないのだ。

普段の住宅街なら帰る人が、家で待っている人が、家で仕事している人が、

いるはずなのに。

………そもそも魔術や呪術、“奇跡”と言われる存在は知っていてもそれらの薄い生活を、

一般人そのものの生活をしているが故に、

まさか魔術ーそれも彼らにとっては人払い程度のーを使っているなんて。

そんな考えにも行きつかない、行きつくはずもない。


「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎ーー!!!!!!!!!!!」


人型の何かは咆哮する、いつまで経っても追いつけない(さくらとにんげんらしきなにか)に苛立つように


「ひっ!」


桜は怯むものの足は止めない、止まらない、止まりたくない。

死にたくないから、少年を助けたいから。


(怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!

でも死にたくない!)


(そうだ、公園を通って街に行けば)


やっとその考えに行きつけた桜、しかし足は少しずつ確実に遅くなっていく。

それでも


(あと少し、少しだけ!)


走って、公園を通ってそれから。

そんな考え、けれど。

桜にとってはやるべきことなのだから。


(もう少し、もう少しだけ!)


公園が見えて来た、あとは真っ直ぐ走り抜けるだけーーーーーーーー


「    

あっ」


足が、縺れた。


少年が腕から離れる、桜の体はそのまま地面にぶつかった。

無理もない、むしろ一般人にしては本当によく持ち堪えたほうなのだから。


「っ!」


地面にそのまま転がる形になって地面にぶつかった痛みと衝撃、足を酷使した痛みがやってきた。


「ーーーっう」


痛い、体が特に足が痛む。

痛みに耐えながら少年を見る、同じように地面に転がっているものの無事のようだ。

混乱し痛みに耐えながら安心した、矢先に。


「⬛︎⬛︎⬛︎!⬛︎⬛︎⬛︎!⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎!⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎!」


何を言っているのかわからない人型が公園の入り口に来てしまった。


ひゅっ、と息を飲んだ音が、桜からした。


(あ、あああ、ああああ、こ、ころされる、ころされちゃう)


本能的にそう感じとった。


(や、やだ、まだしにたくない、しにたくないよ)


じわじわと人型がこっちに、桜の方に来る。

痛みがまだ治らない、恐怖で体が動けない。


(ぼくは、ぼくは、まだ)


「しにたくないのに…………っ!」


人型の剣が桜に振り下ろされ






たはずだった。


人型の胸に、刀が生えるまでは。


「……………え?」


何が起きているのかすらわからない、だって。

なぜ人型の後ろにいきなり刀らしきもので刺した人が現れたなんて。

人型の胸に刺さった刀をそのまま引き抜かず、頭まで到達するように切りながら引き抜いた。

人型の胸から頭まで逹する傷から血が間欠泉のように吹き出し、

人型が血を吹き出しながら倒れ、急激に干からびながら死んでいった。

そして後ろから刀で刺し、その後致命傷を作りつつ引き抜いた張本人は。


「はぁ…………こげなことするからわしに切り捨てられるんじゃ。

ま、聞いとらんからええか」


と言って退けた、右目だけ前髪で隠し血塗れの刀を持ち、

季節外れの浴衣と羽織を着たアルビノの青年がいた。


その異様な光景を見てしまった桜は


「ひ」

「ん?」

「ひ……ひ………っ!」



「ひとごろしぃーーーーー!?!?!!」



「おう、そうだがなんだ?」

「ひぇっ!?!!?普通に喋った!??!!」


………これが日野々芽 桜と人斬り、もとい岡田以蔵との最悪の出会い。

そんな光景を薄ら目で見てしまった、

実のところ桜が担いで逃げていた途中で起きていたが寝たふりをしていた、

今は地面に転がっている無傷の少年もまた


(……ふ、普通にしかも標準語で喋った)


と思ったのだから。

やっとプロローグ終了!

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