ダンジョンに自己啓発を求めるのはいかがなものだろうか(後編)
「私の名前はマトロウシカ。
自己啓発系ギルド「ウォンバット騎士団」メンバーのひとり。ケガはなかったか?オムライスよ」
「いや、おおありです。」
体の半分グッチャグチャなんですけど…。
「ならばこれを使いなさい。」
ヒュッ。ポト。
「こ、これは…?。」
「回復系アイテムの「あまぎゃあ」です。」
あ、あまぎゃあ?えー、聞いたことないな…。
「私も最近まで知らなかった。私が出身の最西端の国の郷土アイテムみたいなんだが、こんなマイナーアイテム聞いたこともなかった。しかし良く効く。試してみなさい。」
どれどれ…もぐもぐ。
こ、これは…ッッ!
体じゅうがポカポカあったまっていい気分になり、俺の体の半分はもとにもどっていた。
どうやらこの異世界では、回復系アイテムはすべて発酵食品で、発酵してればしてるほど、回復力が高いとの事。
しかし、ふう、危ないところだった。あんなキノコふぜいにここまで追いつめられるとは…。
「その通り。なんともなさけない。」、
ウォンバット氏が高らかに言った、
「いかに自分が弱く、はかなく、ひとりではなにもできないゴミクズであるか気づいたか?オムライスよ。
最初からチートで最強で無双など、人間としての成長の楽しみがないではないか?。
そこで、わが自己啓発系ギルド「ウォンバット騎士団」では、あえてまず最弱のオムライスを3年間体験してもらうことにより、そのような最近トレンドのチート的精神をうちくだき、努力と研鑽、自己啓発と精神修養の道へ進んでもらうことを目指しているのだ。」
「う、うへぇ…。」
と、長々とウォンバット氏がご高説を垂れているその時、ざわざわざわ…。
急にあたりの空気が変わったようなかんじで、ごった返してた人びとはまるで潮が引くように左右に引いていき、ふたつに割れたその海の真ん中の道を、ピカピカ銀色に輝く鎧をまとった騎士の一団がこちらに歩いてきて、ウォンバット氏を目の前にして立ちどまった。
「暴走した恐竜をぶったおし、剣でメッタ刺しにした剣士というのは、君かね?、」
「たしかに、あれを倒し、暴走をくいとめたのは、このわたし、ウォンバットだ!。
(第2話参照)」
ウォンバット氏は高らかに言った。
「では、お前を逮捕する!。」
「な、何ッッ?。」
「あの暴走した恐竜は、上級國民にしてブルーアイズホワイトドラゴン勲章受勲者であるハシビロコウ大佐の可愛がっておられた愛竜、プリニウスだったのだ。大佐のご慈悲と折しも新しい王様ご即位の恩赦により死刑はまぬがれたが、お前は今後ずっと牢屋暮らしだ!。」
「ウッソー…。」
銀色の騎士の一団がウォンバット氏を取囲み、ウォンバット氏は抵抗するすべなく、あっという間にスノコでぐるぐる巻きにされ連れていかれてしまったのだった。