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えー、プロローグ。

えー、


やれやれだぜ。


どうやら俺は、ここ、異世界の渋谷の街に、「オムライス」として転生してしまったようであった。


オムライス…。


できたてアツアツの、とろ〜りとろけるタマゴ肌に、たっぷりトマトケチャップのかかった、おいしそ〜なオムライスである。ふう。


えー、どうしてこのような、わけのわからない事態となってしまったのか。

すこし時間をもとにもどして、えー、説明しておこうと思う。


えー、ことのはじまりはこうだった。


とある、うららかな春の陽気の日。

俺は渋谷の街をひとりあてもなくほっつき歩いていた。

青空は青く澄みわたり、ひばり飛びまわり、地にはカタツムリ這いまわり、109は光り輝き、絶好のお花見日和。暦の上では4月(エイプリル)、街ゆく人はみな薄着で、つまり、まぎれもなく世の中は春そのものだったんだが、俺の心はというと、やれやれ、吹雪ふきあれる真冬なみの気温なのであった。


大事な資格試験には落ち、おまけに彼女にはふられ、何をやってもうまくいかず、何を食べてもうまくなく、生きていくのが嫌になってしまっていたのだった。


生きていくのが嫌になったので、俺は思いきって、清水の舞台から飛び降りる覚悟で、渋谷のとある34階建の複合商業施設のビルの屋上から飛び降り自殺を図ったのだった。


しかし、屋上のフチに足をかけたところで、俺は立ちすくんでしまった。なんという断崖絶壁ッ!。地上を見下ろすと、ミニカーみたいな車や豆粒より小さな人がうごめいている。前方を見渡せば、延々と続くビル群のはるか彼方に青白く霞む東京湾が見えた。


…やっぱり今日はやめておこうか。


「えー、また明日にしよう」

そう呟いて後ずさりした右足が、なにかをズルッとふんづけた。


バナナの皮だった。


「うわあああ!。」


スッテーン。コロリ。


俺の体は屋上のフチで一回転半し、直立不動の姿勢のまま、まっさかさまに地上へと落っこちていった。


落ちていく。

俺の人生、終わった。

短かったけど、それなりに長かった人生だった。


ふっと意識が遠のいた、その瞬間(刹那)、まばゆいばかりの眩しい光の光線に包まれ、気がつけば…


えー、俺は、異世界の渋谷の街に立っていた。

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