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第2話 愚かで勇敢な侵入者(2)

「か、勝ったのか……」


 俺はダンジョンコアを食い入るように見つめた。

 地面に倒れる野盗達の亡骸。それを見下ろす妖怪達。俺が長年研究した、理想の【妖怪】の姿がそこにはあった。


「素晴らしいです! ステータスを見れば撃退が関の山かと思っていましたが、まさか全滅させてしまうなんて……」

「戦法と武器が功を制したみたいだな」


 俺たちは小部屋を出てお凛たちの元に向かう。


●○


(あるじ)よ。お主の指示の通り、侵入者を撃破したぞよ」


 お凛は鼻の穴を膨らませて言った。


「お凛、無事でよかった。ご苦労様」

「当然じゃ」


 お凛は口元を隠して笑う。不思議と一つ目小僧達の表情も明るい。


「ところで……盗賊たちはどこだ?」


 俺は周囲を見渡した。先ほどダンジョンコア越しに見通した様子では盗賊たちはこの辺りの床に転がっていたはず。

 にもかかわらず今は死体どころか血しぶき一つ残っていない。


「これはダンジョンの【吸収】の作用です」

「吸収?」

「はい。ダンジョンの性質の一つに生物の死体を吸収するというものがあります。前にも説明しましたが、死体を吸収することでDPに変換するのです」

「そういうわけか。ところでDPの量ってどうやったら確認できるんだ?」

「ダンジョンコアに尋ねれば表示されますが私も常に把握できるようになっています」

「ちなみにこの盗賊たちでどれくらいDPはどれくらいだ?」

「はい。侵入ポイントと撃退ポイント、合計で6565DPの増加。現在保有DPは6775DPです」


 確か現在の総戦力は750DP分。8、9倍くらいの戦力を増やせることになる。


「解放すぐに人間を倒すダンジョンなんてほとんど例がありません。幸先の良いスタートですよ」

「そうだよな」


 俺はそう言いつつも俺は一つ気がかりな点を尋ねた。


「解放すぐに人間が乗り込んでくるってあり得るのか? 待ちわびたかのように現れたが……」

「そうですね。たまたまダンジョンの前を通りかかったのか。それとも……」

「それとも?」

「相当交通量の多い場所にダンジョンが出現してしまったかです」


 アリアは神妙な面持ちでそう告げた。


「前者だった場合は別段問題はありませんが、後者だった場合はかなり大変なことになります」

「何となく予想はつくよ……。人がなだれ込んでくるんだな」

「ええ、アクセスが良いダンジョンは冒険者たちにも好まれますし、国としても早急に対処しなければ治安の悪化に繋がる。数に物を言わせてダンジョン踏破を狙ってくるでしょう」


 今の敵はたった5人だったからよかったものの、相手が10や20だったらわけが違う。


「マコト様、早急に探索隊を出動させましょう」

「探索隊?」

「ええ、ダンジョンの外にモンスターを使役し、辺りの様子を探索してくるのです」

「分かった。じゃあ戦闘直後に申し訳ないが……」

「待ってください。ここは留守番組と探索組に分けましょう。探索している間に直接ダンジョンを襲撃されれば元も子もありません」

「あ、そうだな」


 俺は周りを見た。お凛と5人の一つ目小僧。


「分けようにも少し頭数が少ないな」

「ですね。最低でも現在と同規模の戦力は待機班に割きたいものです」

「じゃあ、他の妖怪を呼び出してみよう」

「よろしくお願いします」


 俺はダンジョンコアの置いてある小部屋に戻った。


○●


 とりあえず頭数を増やしたいので一つ目小僧を新たに15人呼び出した呼び出す。


 ざっとステータスを見ると新しいスキルを見つけた。


 具体的には【空手術】【弓術】【合気道術】【居合術】。

 馴染みがないものもあるが、どれも日本の伝統武術だろう。

 弓術は文字通り弓を持つ一つ目小僧。飛び道具が出来たのはありがたい。


「それと、新しい妖怪も召喚するか。もう強い妖怪を呼び出すとしよう」

「そうですね。人間には盗賊以上に強い者もゴロゴロいるはずですから。ちなみに残りDPは5925です」

「結構余裕があるな……だったら……」


 俺は妖怪辞典を取り出し手頃な妖怪を探す。


「こいつかな。【鬼】」


 俺がそう言うとダンジョンの中心に2.5メートルほどの大男が現れたが。

 腰に黄色と黒の布を巻き、皮膚は赤く短い髪の中から尖ったツノが生えていた。


「な、なんですかこのモンスターは!?」

「こいつは【鬼】だ。俺の世界に伝わる伝説の種族で、伝承によれば人間を圧倒する力を持ってたとか……」

「ま、まあ、圧倒するでしょうね。これで圧倒できなかったら腐った世界樹(うどの大木)ですよ」


 アリアは目の前にそびえる筋肉の巨頭を半ば呆れたような顔で見上げていた。


「ちなみにステータスはどのようになっていますか?」

「えっと……【鑑定】っと」

—————————

種族 鬼(赤)

レベル1

体力 871/871

魔力 0/0

筋力 534

知力 82

速力 741


スキル

【金棒術LV4】

【収納LV2】

—————————


 俺はステータスを読み上げる。


「大したものですね。魔力と知力は低いもののその他は使用DPに比べて高すぎると言っていいでしょう」

「金棒術ってのは……やっぱりあれか」


 俺は頭の中にイボイボのついた真っ黒なバットのようなものを思い出す。鬼と言ったらあの武器だよな。

 俺は更に2体の鬼を呼び出した。体色はそれぞれ青色と黄色。どちらもかなりの巨漢だ。


「よし、人数は揃ったな」


 俺は人員を4グループに分けた。お凛とそれぞれの鬼リーダーにし、5体ずつ一つ目小僧をつける。

 黄鬼グループがダンジョンに残り防衛、残りのの3グループが探索に出る。


「ダンジョンコアを通してそれぞれのモンスターの視界を確認することができます」

「便利だな。じゃあよろしく頼んだぜ、みんな。くれぐれも無理はしないように」

「安心せえ。そこんじょそこらの生物に遅れは取らぬわ」

「ウガー」

「ガウ」

「ガー」


 お凛と鬼たちが返事をする。


 そして、探索部隊は意気揚々と外に出て行った。

豆知識コーナー 【鬼】


「もちろん鬼も妖怪なのですよね」

「ああ。俺の世界じゃ知らない人はいないほど有名な存在だ。鬼に関わる年中行事もあるくらいだからな」

「へぇ、人々の生活に密接した存在なのですね」

「そんな鬼だが、その発祥は『バイキング』と言う説がある」

「ばいきんぐ?」

「海賊の一種だ。俺の元いた国からは遠く離れた場所で活動していたらしいが」

「へぇ、異国の乱暴者を鬼として扱ったと。でも流石に同じ人間ですからそんな勘違いするんですかね?」

「俺の世界じゃ人種の区別ってのはかなり大きいからな。肌が白いってだけで化け物扱いすることもざらにあったらしい。バイキングは特徴として頭にツノのついたヘルメットのような武具をつけていたらしいしな」

「あ、鬼にもツノがありましたね」

「とまあ、ここまで解説はしたが、実際はバイキングが登場する前から鬼伝説らしきものはあった。距離も流石に遠すぎるし、専門家の中ではバイキング説はほとんど否定されつつある」

「時間返してください」

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