第8話 この学校で頑張るしかない
お待たせしました!
よろしくお願いします!(´ω`)
風邪を引いてる間にブクマやポイント入ってて嬉みです
(サブタイ……本当は、そんなに巡らない感)
「さて、今日は文化系の部活を見に行くわよ!」
――放課後。
今日からちゃんとした授業も始まって、やや疲れた時にこのテンションだ。
行きはする、むしろ本日のメインだから。
昨日訪れた運動部はただの美人先輩をチェックしに行っただけで、入部する気は更々なかった。本命は文化部である。
「はいはい、少しお待ちを……」
俺は鞄の中に宿題で使う教科書やノートに筆記具をしまって、教室からある程度クラスメイト達が帰るのを待った。
宇野宮さんは気にしないのかもしれないが、教室から一緒に出たりなんかすれば……「えぇ~、あの二人仲良いんだぁ~」なんて噂されてしまう。
まぁ、時既に遅い気もするのだが。
「ふふ、どこの部から邂逅を果たしていこうかしらね?」
「今日はお任せいたしますよ」
文化系の部活を行う場所は、渡り廊下を渡った先にある教室棟とは別棟の校舎。特別棟。
一階や二階は選択授業で使う音楽室や美術室、移動教室で使う理科室や家庭科室があり、三階もどこかの部活が使う空き教室となっている。
吹奏楽部や美術部は、高校から始めるとしたら難易度的に少し難しいだろう。
そんな部活は覗いて見るだけで、本命はやはり文芸部あたりだ。
そこなら幽霊部員でも平気そうだからな。
「近江君、絵は得意かしら?」
「まぁ、落書きはよくしてたから……下手では無いと思う」
「私もよ! でも、現代人じゃ理解出来ないらしいわ……つまり才能が先に行き過ぎてしまってね」
何も言うまい。何も言わなければ誰も傷つかない。
本当に将来、遠い未来でなら評価される可能性が……いや、無いか。
「美術部は……行かないでも良いかもね」
「そうね、私の才能で他のメンバーを傷付けてしまうかもしれないもの……」
「あはははは」
自分でもビックリする程の乾いた笑い声が出たが、気を取り直して俺達は三階へと向かった。
上っていくよりは下りながら見て回った方が楽だし、本命の文芸部が使っている教室も、三階にあるみたいだったから。
「えっと……。パソコン部、茶道部、アニ研、文芸部……三階にあってめぼしいのはこの四つみたいだけど?」
「パソコンはネットサーフィン出来れば十分だし、お茶は点てたのを飲みたいだけなのよね……アニ研か文芸部かしらね」
そこは完全に同意だった。名前が挙がった今の二つは、見なくていいだろう。
文化部の見学は、運動部と違って外からハッキリと見えない。
入口のドアに付いている窓から覗くか、中にまで入らないといけないから、正直に言うと気軽に行けない環境だ。
興味の無い部活動については覗かないのが、きっと無難な選択だろう。
「じゃあ、とりあえずアニ研から行ってみようか」
「そうね! ちなみに、近江君はどんなアニメを観るのかしら?」
いつもなら、この手の質問への回答は既に決まっている。
とりあえず名作の名前を出して、相手の反応しだいで深夜帯に放送しているアニメのタイトルを出していく。
下手すると、いきなり方向性の違いで会話の終了……なんて事が起こり得るからだ。
だが、今回はちょっと変えて、あまり詳しくない設定でいく。
宇野宮さんに合わせて会話を広げていく予定にする。
「うーん、あんまり詳しくはないかな。有名作くらいかな?」
「なるほど……なら『ローズローズソウル』や『ゴシック少女ユカリ』とかかしら?」
(なにそれ、知らないどころか聞いた事もない!!)
作品名からして、宇野宮さん向けなのは察する事が出来る。
だが、全く知らないタイトルだだった。
これは危ない……アニメに詳しいとか言い出さなくて良かった。
というか、とてつもない爆死アニメの香りがするけど本当に人気なのだろうか?
「そうなんだ……詳しいんだね、宇野宮さん」
「ふっふーん! 近江君にも今度マンガを貸してあげるわね!」
「うん……今度、ね。それより、アニ研の前までは来たけど……入って良いのかな?」
自慢できる事では無いけども、俺はこれでも人見知りである。 中二モードの時は他者の視線を気にする事は無かったが、その仮面を脱いだ今、普通に恥ずかしい。
堂々と出来たら良いのだが、何を話せば正解なのか分からない。だから、緊張してしまう。
「宇野宮さん、どうぞどうぞ」
「な、何を言っているの? 近江君、先にどうぞ? レディーファーストって柄じゃないでしょ?」
「し、失礼な! 俺はいつだって女性を優先してますよ? だから、どうぞ?」
「いやいや……近江君、先に行かないと呼ぶわよ? 終末を。良いの? 呼ぶわよ?」
なるほど。つくづく似ているのな……俺こと山野近江と、宇野宮麻央という人物は。
基本的にコミュ障で、でも格好いいモノが大好きで、どこか普通以外のモノを求めている。
アニ研だって面白いに違いない。でも……宇野宮さんがそれで満足するだろうか?
「じゃ、じゃあ……少しだけ開けてそこから覗いてみない? まずは気配を消すわよ」
「……了解」
まずは気配を消せと言われてもよく分からないが、とにかく静かにしておこう。
宇野宮さんがドアに手を掛けて、スライドさせる。
少しだけ隙間を作って、俺達はそこから教室内を覗き見た。
「うっひょー! 萌え萌え~」
「ぐふふふふ、次の新刊はエロさ増し増しですぞ」
「はぁ……はぁ……このカップリング……尊い……」
教室と言っても、授業で使う教室の半分くらいしかない部活用の部屋である。
――宇野宮さんがドアをそっと閉じる。
俺達は何とも言えない微妙な空気に包まれ、顔を合わせるも言葉が出なかった。
今見えた部員で全員では無いと思うが、女子だけだった。
女子しか居なかったのだが、そこに入っていく勇気が俺も宇野宮さんも無かった。
というか……誰か同人誌を描いていた気がする。レベル高いな。
「宇野宮さんは、ここにしたら? 俺は文芸部に行ってみるから」
「ま、待って! あれは……そう! 我が眷族にするには少々方向性の違いが……って、聞きなさいよ! 待ちなさいよっ!」
我が眷族の辺りから、俺は文芸部の方向に歩き出していた。
宇野宮さんは話す時にわざわざ振り返ったり、ポーズを取る。それが良いチャンスだった。
歩き出した俺は、三階の角部屋にある文芸部の部室を前にして立ち止まった。
実を言うと、部活をせずに放課後の時間を自由に使うのもアリだと思っている。
こんな部活巡りをしている理由は簡単な事……女子との出会いを求めているからに過ぎない。
不純過ぎる動機であるのは自覚しているが、学校以外で女の子と出会う方法がまず分からない。
ギャルゲーの主人公でもないから、ある日女の子が家に転がり込んで来る事も無い。
「つまり、俺はこの学校で頑張るしかない……という事か」
「近江君? 空なんか見上げちゃってどうした……はっ! そういう事ね。でも、もっと夕暮れの方が雰囲気が出ると思うの」
(――さて『普通』の女子との出会いを求めて、ここは一歩踏み出してみますかな)
俺は、俺と同じく空を見上げ始めた宇野宮さんを無視して、文芸部の部室をノックしてみた。
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