奇妙な病と見知らぬ病院。
処女作です。
生暖かい目でご覧ください。
カチ…カチ…と正確に時を刻む時計の音が響く部屋で目が覚めた。
辺りを見渡してみる。
あるのは窓と小さな棚、壁際に置かれたクローゼット。
それだけ見ればただの殺風景な部屋だ。
けれど片腕に繋がれた点滴がここが病院であることを物語っていた。
時計を見ると針は3:29を指している。
まだ起きるべき時間ではない、そう思いまた眠りについた。
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目を覚ますとそこは目が覚めた時の何も変わらない殺風景な病室だった。
ふと腕に目を落とすと繋がれていた点滴の管は無く、針が刺されていたであろう場所には絆創膏がはられていた。
時計を見ると8:04を指していた。
すると
コンコン
とノックの音が響いた。
そして部屋のドアがガラガラと音を立てて開いた。
「おはようございます。昨日はよく眠れましたか?」
目の前の看護婦のような人が問いかけてきた。
「眠れたと思います。」
夜中目が覚めた。そう言うと怒られそうだから嘘をついておく。
すると看護婦は何も言わず部屋から出ていった。
何だったのだろう。
そんなことを考えているとまた部屋のドアがガラガラと開き、目元に花がついている青年が入ってきた。
「お前が新入りだな!よろしく!俺はクラリス、見てわかるだろうけど目から花が生える奇病だ!」
そういうと握手を求められた。
断る理由もない。
手を握り返すと「お前は?」と聞かれた。
自己紹介をするべきなのだろう。
「ボクは…」
そう言ったところでふととあることに気が付いた。
自分が誰で何故ここにいるのかが全くわからないのだ。
暫く黙っていると、
「おいどうしたんだ?」
とクラリスが心配そうにこちらを見つめてきた。
「名前が…分からないんだ」
するとクラリスは笑って
「なんだ!そんな事か!ここではよくある話だしそんなに気にしなくていいぜ?ゆっくり思い出していこう!」
そう言ってボクの頭をくしゃくしゃと撫でた。
ただでさえ寝癖でくしゃくしゃな髪がいっそうくしゃくしゃになってしまった気がする。
「それまでなんて呼べばいいんだ……?」
そう言ってこちらをじっと見つめてくる。
目を合わせるのもと思い目をそらす。
そうして暫くしてから「あ!」と大声をあげて
「シロなんてどうだ?」
と、提案をしてきた。
何故かと問うと髪の色が白だからとの事だった。
まぁ思い出すまでの仮の名前だ。
シロでも良いだろう。
「改めてよろしくな、シロ!」
「よろしく。」
そう言って握手をする。
手から伝わるクラリスの体温は冷たかったけれどどこか温かかった。
「あ!そうだそうだ!もうすぐ飯だぜ!ほら、早く行くぞ!」
そう言って手を引かれて廊下を抜け食堂のような場所へと連れていかれた。