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百合色横恋慕  作者: 芝井流歌
第2章 ビビット編
54/105

54☆番外編〈寄稿作品2〉しっちぃ様より

「なあ、汐音」


 夜も更けそうな頃の、眠りにつこうとして、電気を落とした瞬間。茉莉花のアルトボイスが、切なげに部屋にこだまする。あまりにもらしくない雰囲気に、少しだけ動揺する。


「何よ、そんなしおらしい声出して」

「何で、ボクのこと好きになったわけ?」


 普段は、かっこいいと思われたいくせに、男っぽく見せようとしてるくせに、こういう繊細なとこだけは、その辺の女の子より女の子らしい。少なくとも、あたしよりは確実に。


「別にどうだっていいじゃない、そんなの」


 投げやりに答えて、それでも頭の中はぐるぐると考えがよぎる。どうして、アイツなんかのこと、好きになってたんだろう。出会いからしてサイアクで、大っ嫌いな男っぽい恰好して、チャラいし、あたしのタイプからは、完全に大外れだったのに。……それなのに、いつの間にか、誰にも渡したくないなんて思ってしまうくらいになってて。あの時、茉莉花の部屋で思った気持ちは、紛れもない本心。

 

「どうだっていいこと無いだろ!?一応、恋人なわけなんだし」

「別にいいでしょ、……今、好き同士なら」

「……ねえ、今、何て言ったの」


 男らしくいたい癖に、誰とでもいちゃつくくせに、あたしの出した「好き」って言葉に、異常なまでに弱い。他の誰にだって言われるだろうに、あたしのだけは特別なんだ。にやけてしまいそうになるのを、必死でこらえる。あんたが弱み見せようとしないなら、あたしも見せてやらない。それくらいのほうが、なんだか落ち着く気がするの。


「もう、今日は言ってやんない」

「えー?いいじゃんか、汐音のケチ」

「本日のサービスは終了しましたよーだ」


 軽口叩きあって、たまに喧嘩して、でもそれは、茉莉花があたしのこと、嫌いにならないってわかってるから。弱いとこも好きなことも晒せるくらいに、あたしが茉莉花のこと、好きでいられる限り。


「じゃあ、せめてそっちで一緒に寝かせてよ」

「……それくらい、好きにしなさいよ」

「好きにしろってなんだよ、汐音だってこっちのほうがよく寝れるんだろ?」


 そう言ってどかどかと入ってくるあたり、気づかれてて、それも何か嬉しい、調子に乗るから、言葉には言ってやらないけど。


「茉莉花のほうが入りたいんでしょ?」

「何だよ、汐音は嫌って言うのかよ」

「別に、嫌とは言ってないっての」

「全く、汐音は素直じゃないなぁ」


 寝返りを打って、茉莉花の来るほうから顔を背けると、布団に入ってきた茉莉花は、後ろから抱きついてくる。なんでこんなに甘えんぼになってるんだろう。嬉しくないわけじゃないけど、なんだからしくないような。


「ほら、やっぱり、茉莉花のほうが寂しいんじゃん」

「べ、別にそれはどうだっていいだろ?」


 やっぱり、図星なんじゃない、そんなに慌てちゃって。普段のカッコつけてるとこからは、考えられないくらいかわいい。ファンの子達が聞いたら、どうしちゃうんだろうってくらい。……まあ、他の人に言うわけないんだけどね、こんなとこ。


「ふーん、あたしのことは気になるくせに、あんたのことは気にするなって言いたいの?」

「そういうんじゃないけどさ、……じゃあ、汐音はどうなんだよ、ボクのことなんて、どうせ言わなくたってわかるだろ?」

「まだ言うつもりないんだ、……なら、あたしだって言わなくていいよね」


 もう一度寝返りをして、茉莉花の顔を見ると、唇を尖らせて、頬を膨らませてる。ああ、もう、そんなとこがかわいいのに。笑い声をこらえて、そのまま顔を寄せる。抱き寄せて、そのまま上に乗っかるようにして。戸惑ったような顔が、暗がりなのにはっきりと見える。


「何のつもりだよ、急に」

「そっちがそのつもりなら、あたしも何も言ってやんない」


 その代わり、全部伝えてあげる、あんたへの、あたしの気持ち。言葉を紡ぐより、あたしの唇そのままで。近づいた距離を、そのままゼロにする。一瞬で離して、その度にまた触れさせて、……だめ、重ねるだけじゃ、全然足りない。


「んっ、はぁ、しおん……?もう、わかったって……っ」

「やだよ、……まだ、伝え足りないもん」


 重ねるだけで、息絶え絶えになっちゃうんだ。でも、まだ重なりたいの、もう溢れそうだよ、、二人で分かちあう気持ち、一人で抱えてるんだから。

 軽く舌先でノックすると、すぐにドアが開く。茉莉花の、心の扉、今は、私だけのもの。


「ちゅぅ、ぴちゅっ、あぁ、んんぅ……っ」

「んんっ、んにゅ、ちゅぷっ、はぁ……っ」


 乱れてく吐息と、二人の気持ちが、溶けて絡まる水音。頭の奥が、『うれしい』と『気持ちいい』が混ざった幸せにじんじんと痺れてくる。このまま、混ざって、一つになっちゃいそうなんて思えるような。時間もわからなくなるような、永遠のような一瞬は、唇を離しても余韻は消えてはくれない。


「ちゅっ、……もう、いいよ……っ」

「……汐音、ずるい」


 わざと目線逸らしたって、無駄だってわかるのに。こんなに近くにいるんだし、本当は嬉しかったことだって、分かっちゃうのに。


「私とべろちゅーするの、嫌だったんだ」

「そんなわけじゃないけど、……そういうとこがずるいんだよ、汐音は」

「はいはい、そういうことにしておきますよ」


 ああ、もう。私も好きすぎて、どうにかなっちゃってるみたい。

 力が抜けた体は、そのまま茉莉花に受け止められる。あたしの、大好きな温もりに。

星花女子プロジェクトで一緒に活躍中のしっちぃ様は、プロジェクト内の作者様の中でも心情のモノローグをとても繊細に描かれる上位の方です。

こちらも汐音のツンデレ(?笑)を細かく再現してくださってて嬉しい限りです♪

ピュアでかわいい2人に描いてくださって本当にありがとうございました♪

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