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魔物使いの娘  作者: 天都ダム∈(・ω・)∋
第九章 人繭のセリセリセ
166/168

愛するということ Ⅲ


 ☆


 痛い。全身痛い。脚をぶちぶち引きちぎられる度に、もうなんか死なせてと思う。

 だけど、それでも身体は勝手に動くし、あとなんか、糸を出す時すっごく恥ずかしい感じがする。もう、本当に嫌だ。

 そんな事を考えられるぐらいには、アリアリアの意識は表層に浮かび上がっていた。


(アリーちゃーん、聞こえますかーっ!)


 だから、どこか遠くから聞こえるその声にも、


「……リーンのお姉ちゃん?」


 と、反応することが出来たのだった。


(……見つけた! えーっとよく聞いてください、これから私とちょっとした契約をしてもらいます)

「け、契約? なんか大変なこと?」

(おまじないみたいなものです、これから言うことをよく聞いてくださいね)

「う、うん……」


 こうしている間にも、凍りついた糸に絡まった自分の体は、もがいてもがいて、何とか抜け出そうと足掻いているところだ。身体へのダメージを完全に無視して動いているので、とんでもなく、痛い。


(ここで聞いたことは絶対に内緒です、誰にも言っちゃいけません、特にハクラには!)

「う、うん……あ、あぐっ、い、痛い、痛いかな!」

(もうちょっと我慢してください……あとは、うん、無いですね! じゃあ行きますよ!)

「は、はいかな!」



(……我が名は■■■■■■■・リングリーン、汝、その心を縛られず生きるならば!)



 ――それは、当代におけるリングリーンの正統後継者、リーンという少女の真名。

 ――()()()()()()()()()()()()()()


(―――皆が待ってます、さっさと起きなさい、アリアリア・セリセリセ!)


 そうして、緑色の光が、視界いっぱいにアリアリアを包み込んで――――――。



 ☆



「………………あれ」


 気がついたら、倒れていた。

 身体に全然力が入らない、ぼーっとしていて、頭もグラグラしている。


「アリー!」


 そんなアリアリアを抱きかかえてくれたのは、アリアリアが大好きな人だった。

 黒い髪、青い瞳、いつもは困ったような笑みを浮かべているその人は、今もやっぱり、そんな顔をしていた。


「……クロヤ…………あれ」


 段々と感覚が戻ってきて、アリアリアは気づく。


「…………わたし、服着てないかな!?」


 身体の肥大化と苛烈な戦闘に伴い、普段着のワンピースなどボロ切れのようになってしまって、魔人体から元に戻ったアリアリアは、一糸まとわぬ姿だった。

 辛うじて、クロヤの上着をかけられているだけで、身を隠すものはなにもない、その状態で抱き抱えられているのだから……。


「あ、あうあうあうあうあ」

「ご、ごめん、すぐに服を持ってきてもらうから……アリー、よかった……」


 クロヤは、込み上げてくる衝動を押さえきれず、ぎゅうと抱きしめてくれて、羞恥と嬉しさがまざって、どうにかなってしまいそうだった。



「おーい」「大丈夫ですかー」



 二人の客人の声が、駆け寄ってくるのがわかる。

 だから、はっきり言葉にするなら、今しかないと、アリアリアは、まだ荒い呼吸を整えるために、大きく息を吸い込んだ。


「あ、あのね、クロヤ、わたしね」

「……うん」

「クロヤのことがね」


 ボンッ






 ✾


 全ての目論見は上手く行きました。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()


 だけど皆が笑顔の幸福論(ハッピーエンド)は、〝酷嬢(クルーエル)〟の好みではありませんでした。


「くふふ」


 パチン、と指を弾いて、最後の呪いを発動させた。

 イスティラの血を取り込んだものに与える、不可避の終焉。

 きっとセリセリセも、あの子達も、愉快な顔をしてくれるでしょう。




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― 新着の感想 ―
契約と継承の名前を一番ヤバイのに知られた上に最後にやらかされたぁ…
[一言] あっ……え、えぇ……?
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