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断章 一人と一匹の、旅の終わりに
竜は長寿だ。本来なら、こうして目を閉じる必要はなかった。
だが、竜にとって、愛する者が隣に居ないまま、時間を生きる事は、耐えきれない苦痛だった。
だから眠りについた。時折〝目〟を開き、外界を見ることはあったが、それは竜にとって、どうでも良いことだった。
長い長い時間を、ただひたすらに、思い出を反芻し、繰り返し夢を見た。
――――ああ。
だが、ついに竜は蘇った。愛する者の面影を見たからだ。
錆びつく体で、触れようとすると、阻むものが、現れた。
それは、竜に呪われた赤だった。
長らく忘れていた感情を、竜は思い出した。
ああ、サフィアリス、聖女サフィアリス。
人は――――――本当に変わったのか?




