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あの頃の記憶  作者:
2/2

いつもの日常 1

 カーテンの隙間からこぼれた日差しが私の体の一部をじりじりと照りつける熱さで目を覚ました。


 (首が熱い。)


 熱くなった首筋まで布団を引っ張る。


 熱さから逃れ二度寝をする姿勢が整い目を瞑ると同時にチリリリリリと目覚ましが鳴った。


 御堂明美みどうあけみは二度寝を諦め、むくりと体を起こし目覚ましを止めた。


 立ち上がった拍子に長いさらさらとした髪が流れ落ちる。


「……眠い。」


 ぽつりと言葉をこぼしながら柔らかな黒い瞳を擦ると睡魔に負けないために立ち上がり腕を頭上で組み大きく体を伸ばす。


 その体はまだ年端もいかない少女である。


 そのままカーテンのほうへと向かい、ザーッと開くと同時にまばゆい太陽の光を部屋に取り込んだ。


 御堂は横引き窓を開けて新鮮な空気を取り入れるといつものように手早く着替えた。


 数分後―――



 御堂は細いストライプの入った爽やかな青のワンピースを身に纏い、手には教科書や辞書が詰め込まれたかばんを持って洗面所へと向かった。


 顔を洗い、歯を磨き寝癖をくしで簡単に梳いていく。


 身支度を簡単に終わらせるとかばんを玄関に置いてキッチンへ行き、卵焼きを作る。


 じゅーっ、と火が通る音が御堂一人しかいないもの寂しい家に響いた。


 初めて卵焼きを作ったときは調子に乗って焼きすぎていたり半熟だったりとまちまちだったが1年以上毎朝作り続けているのでレベッカ好みのものができるほどの腕前となっていた。


 盛り付ける前に一口味見をする。


 (美味しい。)


 御堂は一人微笑んだ。


 美味しく出来上がった卵焼きを一口サイズに切り小さな小皿に盛り付け、トースターで表面がカリッとなるまで食パンを焼いた上にイチゴジャムを塗って食卓へ運び朝の天気予報を見るためにリモコンのスイッチを押す。


 『――本日の日中の天気は晴れですが、夕方ごろから雨雲が多くなり一時雨が降るので傘を持って出かけましょう。』


 テレビをつけるとちょうど天気予報が流れていた。


 (今日は病院に行かないといけないのに。)


 少し憂鬱な気持ちを抱きながら両手を合わせて、いただきます、とつぶやくと歯ごたえがよくなった食パンを齧った。


 もぐもぐと頬張りながら最近起こったニュースを眺めていると――


 ――ピンポーン。


 御堂がテレビ時計を見るといつの間にか集合時間を過ぎていた。


 「御堂まだか?」


 友達の本田将貴ほんだしょうきが御堂の自宅まで迎えに来たのだ。


 「ごめんね、今行くからちょっと待って。」


 御堂は急いで食べかけていたパンと卵焼きを口に放り込みリスのように頬を膨らませながら食器を流しに持っていき、テレビを消すと手早く外靴を履きかばんを持ってバタバタと家を出た。

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