五話
「今の!今の見たか!」
そう言いながらケタケタ笑う──否、嗤う清原に斯波は呆れた目線を飛ばす。
白虎派──南東高校陸上部は、先程、青龍派の一人を銃殺した。とはいえ、崖の上からだった為、銃殺した相手は気付いていない様だった。今となってはどうだったか分からず終いだが。
「清原、笑い過ぎだ」
斯波はそう発する。
「だってよォ、俺らが仕掛けた簡単な罠に引っ掛かって、簡単に死んだぞ?
てか、青龍派はあんなのばっかなんだろ?どうせ」
清原は相変わらずケタケタ嗤っている。
斯波は顔を顰めた。
清原は前からこのような人間──加虐的なことをするとひたすら嗤っている様な奴──だったが、今回の出来事で更に箍が外れた様だった。
「まぁ、でも良いんじゃないですか?」
玉木が言う。
「相手はこれが本物の殺し合いの戦争であることを認識した様ですしね」
「何で分かるんだ?」
芥木が聞いた。
「まぁ、チョットした細工をね?」
ニヤニヤしながら言う玉木に、芥木は「そう・・・なんだ・・・」と、引きめに言った。
「・・・そろそろ行くかな」
斯波の呟きに、「お?やっと?」と、倉橋が反応する。
「奴らは丸腰だ。さっさとかたをつければ、いい話だ」
「それじゃあ、行きますかね?斯波部長」
我賀瀬の言葉を筆頭に、白虎派が動き始めた。───否、数人動かない者達がいた。
亘、石中、百瀬、永岡、六角の五人だった。
「・・・さっさと動けよ」
赤城が低い声で威圧する。
「やっぱさ、駄目だよ。人を殺すなんて」
百瀬の言葉に、赤城が「またかよ」と、舌打ちする。
「じゃあ、死んでもいいのか?」
「そうじゃないけど・・・」
百瀬は言葉を濁す。赤城や、その他“戦争の賛同派”は、全員銃などの武器を持っていたからだ。
恐れをなしていた。
「それとも、もう一人必要なの?」
鏡の発言に、“反対派”は青くなった。
「佐田のこと、忘れた?」
鏡は笑顔で言うが、目が笑っていなかった。
「・・・」
百瀬でさえも、言葉を失った。
「一同、出陣」
斯波の声が響いた。