表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

四話

高木と久里が着替え──女子は別室だったらしい──が終わった後、友情戦争についての会話が始まった。


「・・・まさか本気じゃないよな?」


浦瀬が高木に聞く。


「殺し合いとか・・・まさか・・・な・・・」


青柳も続けて言った。


だが、二人とも顔が青かった。信じ難いとはいえ、既に有り得ないようなことが幾つか起きてしまっている。もしかしたら、と、不安が募った。


「斯波はそんなことしないよ」


高木が静かに、だが、はっきりと言った。


「少し無愛想だけど、優しい奴だし・・・」


「じゃあ、大丈夫ですよね」


黛が高木の言葉を聞いて、安心する。他の面子もそうだ。


「問題は──」


そう言い始めたのは九保だ。余談だが、九保は北西高校・特進科の秀才である。


「──ここからどうやって出るか、だ」


九保の言う通りだった。仮に斯波達が攻撃して来なくても、戻れなければ意味は無い。


「何か無いのォ?」


塩原がかったるそうに言った。こちらはいつも通りだ。


「取り敢えず、外出るか」


ここで発言したのは、頼れる部長・高御堂だ。


そうだね、と皆が賛成し、外へ出る時だった。


「あ、あのさ!ぶ、武器持っていこうよ!」


北西高校のトラブルメーカー・車谷が言い出した。


「はぁ?何で?」


澤木が呆れたように言う。澤木は車谷より年下だが、いつもトラブルしか持ち合わせない車谷に呆れ、信頼、尊敬おろか、敬語すら使っていない。他の一年生も大半がそうだ。


「や、だって、何かいたらどうすんの?」


「いたら、って・・・アンタなんか見たの?」と、西岡が言い放つ。それでもなお、車谷は「や、でも・・・」と、モゾモゾ言っている。


「放っとけ。行くぞ」


高御堂が言った。皆は──車谷は渋々──歩き出した。


外は相変わらず、森だった。永遠と続いてそうな、深い深い緑の森。


「ほーんと何も無いっすね」


チャラいノリの原は、退屈そうに言った。歩くテンポが速いのは、原の種目が競歩だからだろうか。


「おい、あんまり離れんなよ?」


高御堂が心配そうに言った。


「大丈夫っすよ!」


原はどんどん先へ行く。


その時、「キャッ!」という短い悲鳴が聞こえた。


近江がつまづいて転んだ時の悲鳴だった。


久里が「大丈夫?」と、近江に手を差し出すと、近江は顔を赤くしながらモゾモゾと「有り難うございます」と、言った。


これには皆が冷やかした。なにせ、近江が久里のことを好きで、久里の前だと動揺してしまうという特徴があるのだ。


その証拠に、近江はいつも久里のことを“ヒササト先輩”と、言ってしまう。その都度、久里は「クリだよ」と、笑って教えるのだが、小一時間後にはまた“ヒササト先輩”と言ってしまう近江は少し天然なのかもしれない。


原は「・・・ったく、何だよ」と、皆が近江に注目している隙に、先に行ってしまった。


だが、皆の注目は直ぐに近江から別なものに変わった。


「うわぁ!!」


突然、原の声が聞こえた。皆が声の方に振り向く。


「おーい、原ァ!二度目は面白くねぇぞ!」


男勝りな未沖が叫ぶ。だが、返事は無い。


「原!ふざけるなよ!」


高御堂も叫ぶ。それでも、返事は無い。


試しに青柳が、原の方へ走っていった。それから十秒も掛かっていないうちに、戻ってきた。


それは、青柳が短距離選手だから、という訳ではない。否、青柳自身が短距離選手であることには変わりないのだが、この場合、近くで原を見つけたのであろう。


「いたか?」


高御堂が走っている青柳に聞いた。


青柳は答えず、全速力で戻ってきた。青い顔をして。


「どうした?」


高木が聞いた。


「・・・死んだ・・・」


「・・・は!?」


それを聞いた久里は、咄嗟に発する。


「・・・眉間・・・脳天撃ち抜かれてた・・・」


青柳は、青い顔を引き攣らせながら、言った。皆の間に衝撃が走った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ