一話
「変な鴉だなぁ…」
未沖の一言で始まった。
「確かに、何か目が三つあるね」
久里も呟く。
北西高校陸上部。未沖が、久里がそして、主人公・高木らが所属する学校と部だ。
今回、この陸上部は合宿で某所に来ていた。
この“変な鴉”は皆がクタクタに疲れ、夕飯にパクついている時に現れた。
外は暗闇で、街灯によって辛うじて見える程だったが、確かに目は三つあるように見える。
「突然変異かな?」
「やだ…気持ち悪い…」
皆は口々に言い出した。
「場所、移動する?」
高木が皆に提案した。皆は賛成!という声と共に移動を始めた。
━━高木さん。
「え?」
高木は誰かに呼ばれた気がした。
「どうした?」
久里が驚いて聞いた。
何でもない、と高木は返した。
━━高木さん。
また聞こえた。高木は空耳だ、と思い無視した。
━━高木さん。聞こえているでしょう?
聞こえない、聞こえない。
━━斯波様からの御命令が下されました。
高木は慌てて振り返った。何で、斯波が出てくるんだ!?と。
━━強引で申し訳ありません。
高木は目の前が真っ暗になり、倒れた。
冷たい空気が、頬を摩った。
近くから水が流れる音がする。
「…ん?って、何だ此処…」
高木は立ち上がった。が、かけていた眼鏡が無いことに気付き、しゃがみ、探し始めた。
眼鏡があった。
眼鏡をかけて、歩き始めた。
場所は森だった。マイナスイオンが、多く発せられていた。
「ったく、さっきの声は何だ?それに…あ…斯波が何で出てくるんだ…。彼奴は…もう…」
一人で高木は、愚痴(?)をこぼしながら歩いていた。
「高木さん」
あの声が聞こえた。
高木は飛び上がりながら、声の方に振り返った。
「!あ、あの三つ目の鴉!」
高木の声は森に響いた。
鴉は木に止まっていた。例の三つ目━━青い瞳だった━━を高木に向けて。
「やはり、驚かれますか。私は三ツ眼鴉、と申します。この友情戦争の進行係をやらせて頂きます」
三ツ眼鴉はそう言った。
「あの…友情戦争って…」
高木は控えめに聞いた。
「友情戦争とは、過去に喧嘩などをし、仲違いした方々が決着をつけるための戦争です」
「!じゃ、じゃあ…相手って…斯波ですか?」
顔を引きつかせながら、高木が三ツ眼鴉に聞く。
「はい。そして、今回の戦争の主催者も斯波様です」
━━嘘だろ?
内心、高木は思った。
斯波は中学の頃、一緒のクラスの高木の“親友”だった。だが、一緒に行こう、と考えていた南東高校の受験直前に高木が志望校を変えてしまい、それ以来、喧嘩別れのようになってしまったのだ。
無論、それ以降会話もしていない。
「あの…ルールは?」
ともかく、友情戦争のルールが分からなければ、始まらないので、高木が三ツ眼鴉に聞いた。
「簡単です。殺し合いをしてもらいます」
【続く】