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「失敗作」  作者: さや
1/1

優奈の仲間

以前文章を褒められ、調子に乗って書き始めました。

大変つたない文章ですし、内容もボロボロだとは思うのですが、挑戦してみることにしました。アドバイスやご指摘など頂けると、とても嬉しいです!

2050年___遺伝子組み換えを経て生まれて来た人間の数が、全人口の7割を越した。膨大な数に及ぶその人間たちは、様々な理由によって親の望む通りの容姿と能力をもって誕生した。名だたる有名企業の社長やインターポールの幹部…多岐に渡るその人間たちの活躍によって遺伝子組み換えは正当化され、より幅広く普及していった。しかしごく一部___全体の1割にも満たない数の人間は親の期待に沿わない形で生まれた。彼らは政府の管理下で生活することになり、学校や就職先までも「失敗作」用のものに行かされ、暴走を起こさないか監視された。そして「失敗作」と後ろ指を指され日々をおくることとなった。そういう人たちが出てくることすら問題にならないほど遺伝子組み換えは人類を魅了していた。


ジリリリリ ジリリリリ…

原子的な目覚まし時計の音が優奈(ゆうな)を叩き起こした。視界の右半分が緑色のフィルム越しに見ているようだった。いつものことだ。低血圧でふらつく足を動かし洗面所に向かう。じゃばじゃばと顔に水をぶつけてから、ふっと鏡を見上げた。目の前に映る自分の顔は、基本は毎日見る「一般人」と同じなのに確実に違うところがあった。瞳の色だ。優奈は遺伝子組み換えの所為で生まれつき右目が翡翠色なのだ。それは視界にまで影響する。

『生まれつき赤の色素が欠如してるんです。理由は不明ですが…』

金属性の声が優奈の頭に蘇った。

『遺伝子組み換えがうまくいかなかったという説明を聞いた優奈さんの母親は、貴方を残して去って行きました。___…正直私たちもそろそろ限界です。生後2週間だった貴方を12歳まで育てたのです。責任は十分すぎるほど果たしました。もうこれ以上は面倒を見れません』

優奈に事務的な口調でそう告げた担当者の顔はもう覚えていないが、その顔に浮かんでいた表情だけは鮮明に思い出せる。呆れと迷惑、だった。優奈は迷わず病院を出て「失敗作」用のこのアパートに入った。居心地はよくないが、ここなら人の悪意に触れずに過ごせる。


ハッと我に帰ると水道が流れっぱなしになっていた。優奈はため息をついて蛇口をひねった。

時計を見ると、迎えが来る2分前になっている。慌ててキッチンに入って戸棚から食パンを取り出して口に詰め込む。制服を身を包み、髪を整えベッドの横に投げ出してある学生鞄を掴んで家を出る。

アパートの外に出ると、もう「迎え」の3人がガードレールによりかかっていた。

月葉(つくは)楨希(もとき)和也(かずや)お待たせ!」

「おはよう優奈ちゃん!」

「よっす!」

「あ、優奈おはよー。そんなに待ってねーよ」

左端で黒いストレートロングヘアをなびかせているのは親友のクールな文学美少女、月葉。彼女も「失敗作」であるという証拠に、右目が黄色に輝いている。その隣は赤く燃える右目をもった、元気すぎて後先考えないタイプの和也がいる。最後に無駄にモテる美形の楨希が気だるげに立っていた。楨希の右目は深い青。

「優奈、最近毎日遅めじゃね?」

「ちょっと楨希ったら、小姑じゃないんだから細かいこと言わないの!」

「…どうでもいいんだけどそろそろ行かねぇと遅れんぞ」

「あっ待って楨希〜!」

4人は近所に住む同じ中学のクラスメイトであり、優奈が大好きな昔からの友達でもある。

優奈たちの右目は今まで確認されたことのないタイプの「失敗」で、同じ時期に生まれたこの4人しか持っていない「失敗」だ。


優奈たちの通う学校は例によって政府が用意したもので、全校生徒が「失敗作」だった。ある者は精神に異常をきたし、またある者は通常では有り得ない身体を持っている。一般的に見れば優奈たちも十分におかしかったが、この学校の中ではダントツでマシと言って良かった。

「むーちゃんおはよー」

「あ、優奈ちゃんおはよう!」

「おっす秀斗」

「なあ和也その女子こっちにも紹介しろよー」

「や、遠慮するわ」

生徒たちが集まり始めてだんだんと騒がしくなっていく教室の中でも言葉をまともに交わすことすらできない生徒は10人を下らない。なので授業内容も通常とは異なる。もちろん通常授業に比べて速度は落ちるので、卒業に必要な単位を取るには一般の学校より3年も多くかかる。そのような状況下で優等生で居続けることの方が珍しく、不良やチンピラも数多く存在する。そして彼らの悪名が「失敗作」の評価をさらに下げている面もある。身近なところでは和也のつるんでいる秀斗らが学校内でトップの質の悪さを誇る不良グループである。今日もパーカーにジーンズで、制服なんか欠片も着ていない。和也の〈理解されずらいけどいい奴〉という認識も、そろそろ改めて然るべきだと思う。優奈は小さくため息をつくと隣の席の楨希に話しかけた。

「ねえ楨希。あの人たちのことどう思う?和也が今年から絡んでる人たち」

「めっちゃ捻くれてる」

「だよねぇ…」

楨希も和也たちが駄弁っている方に目をやり、呆れたように首をふった。

「あいつまだ懲りてないのかよ。去年友達とか言ってたやつにも結局裏切られてたじゃねーか」

優奈は苦笑した。

「うん、楨希なんか『悪い奴らを避けたければ和也の知り合いを避ければいい』とか言ってたよね」

「だってよ、和也っていつも見事に俺が警戒してた奴らと仲良くなって、裏切られてるじゃん」

「そうだね〜」

確かにその通りだ。和也は友情運が極端に悪い上に人を見る目がない。おそらく2ヶ月後くらいには秀斗たちにも派手に裏切られて泣き帰ってくるのだろう。

___まあ恋愛運があんなにいいんだから仕方ないか。

優奈はニヤッとして月葉の方に視線を向けた。月葉はこの学校で数えるほどしかいない優等生の1人で、今も教科書を読んで授業の予習している。おまけに美人でスポーツもできるハイスペックさである。

『わ、わたしね…和也のこと…す、好きで…そ、その、優奈ちゃん…応援…してくれないかな?』

月葉が真っ赤な火照った顔で優奈にそう打ち明けてきたのは、先週の週末のことだ。和也の幸せ者め、このぅ!と心の中で叫びながら二つ返事でOKした。

そのときのことを思い出してにやけが顔全体に広がってきたところ、優奈の隣で肘をついていた楨希がちらっとこちらを見ていきなり

「月葉と和也?」

と言ったので、あやうく唾を吹くところだった。

「え、なんでわかるの?」

「そりゃ見てればわかるっつーの。お前がニヤニヤすんのは恋愛がらみだし。お前が鈍すぎるんだよ」

「ひどいな!でも和也だって気付いてないじゃん」

「あいつはあいつで自分のことでいっぱいいっぱいなんだよ」

「自分のこと?月葉以上に大事なことってなに?」

「はぁ?気付いてないのかよ… お前の鈍感も大概にしろよな!和也だって月葉のこと考えてるんだよ」

「えっ!?うそ!そ、それってまさか」

優奈は口の形で楨希に聞いた。

りょ う お も い ?

楨希は呆れた顔で見ていたが、ため息をつくと

「当たり前じゃん。どこ見てたんだよ」

と返してきた。

「むーーー!

…あれ?月葉と和也がそうなら残されちゃったの私たちだけだね〜非リアは肩身が狭いな!」

「あぁそうだな」

「ん?てっきり楨希は嫌がるかと思ってたけど…」

「俺はあんま気にしてないから」

軽口を叩いていると担任が入ってきた。

「はい、静かに〜。今日の日直…月葉か」

「あ、はい!ほら和也席戻って!起立、礼!」

この学校の教員も通常の学校から政府に引き抜かれて来ている。それは降格に他ならないので、常にモチベーションが低く、やる気がない。不良グループが授業中に外に出て行っても止めようとする気配すらない。でも一応テストに出てくる範囲や教科書に書いてあることは一通り教えてくれるので、アホの子である和也と優奈は大助かりだ。更にテストまで1ヶ月をきった今なら尚更だ。タブレットを取り出して狩りの前のタカのような目つきで文字が流れるスクリーンを睨んだ。


「はぁぁ〜疲れたぁぁ〜」

「ふふっ優奈お疲れー!昼休みだね!」

「後で月葉のノート貸して〜」

「もちOKだよ!」

優奈が机の上でへばっていると向こうから和也と楨希が歩いて来た。

「今日一緒に食おーぜー」

その途端いい考えが浮かんで飛び起きた。

「月葉、今日私たち部活あるんだった!うん!今すぐ行かなきゃ!そういうことだから、がんばって!」

そう喚くなり楨希の腕を引っ張って教室の外に出た。ちなみに優奈と楨希は帰宅部である。後ろから月葉の当惑した声が聞こえたが、これは優奈なりの応援である。後ろの楨希に笑顔で振り返る。

「楨希屋上行かない?」

「や、別にいいけど…いきなりなに?」

「あの鈍感2人組を2人きりにしようと思ってね!」

「あぁなるほど。いいかもしんない」

「でしょ?だからさ、行こう!」

「ちょっと待って、購買でなんか買いたい」

「了解!私もついてく〜」

ここの学校は購買だけは通常の学校より充実していると言える。それは致命的なアレルギーをもつ生徒もいるからと、生徒の悪行を少しでも収めたい教員達がストレスを食で発散してくれればいい、と頑張ったかららしい。努力の方向が間違ってる気もするけど優奈はこの購買が気に入っている。

「おばちゃーん、いつものちょーだい」

楨希は慣れた様子でパンの入った袋とお金を交換して戻ってきた。

「いつもここで買ってんの?」

「うん。優奈は?」

「前日の夜に用意してる。低血圧だから朝は弱いんだ〜…」

「あー、そういえばそうだったな。一人暮らしなのに遅刻とか大丈夫なのか?」

「うん、なんとかね。というか…」

優奈は周りを気にして声を潜めた。

「なんかね、遅刻ぎりぎりの時間になると右目が勝手に起きるの。なんか無理矢理って感じで」

「まじで!?それは便利だなー」

「ちょっとぉ、褒めるとこじゃないよ!不気味じゃない?」

「んー、優奈が自分で起きれれば1番いいんだけどな」

「そうだねー…。楨希はやっぱり家族に起こしてもらってる?」

「うん…。でも無断で部屋に入ってこられるのはなー」

「お母さんが泣くよ?いいじゃん、起こしてもらえるって幸せ」

「…俺の母親は罪悪感と罪滅ぼしで世話してるだけなんだ。いつ殺されるかもわからない」

楨希の言葉は騒がしい廊下に不自然に沈み、2人に沈黙を連れてきた。

楨希が共に暮らす家族は、楨希を「失敗作」に産んでしまったことを償わなければいけない、と思っている。楨希はそれを『上っ面だけの偽善』『生殺し』と呼んで、嫌悪をあらわにしている。物心ついたころから家族と顔を合わせたことすらない優奈、月葉、和也にとっては想像できない苦悶だった。

ここまで読んで下さりとっっっっってもありがたいです!!

ありがとうございます!(>人<;)

もし、もしもしもし読んで下さる慈悲深い方がおられましたら続きを書きたいです…

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