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星に願いを、神には愛を  作者: ちぇりー
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水の都

初めての作品です!


これからゆっくりと話を広げていきたいと思っておりますが、更新が大変遅くなると思われます。この作品を読んで下さる心優しい方々に御迷惑をおかけ致しますが、気長に見守って下さるとありがたいです。

*****


昔々のその昔。

神様たちが実在していた頃のお話。


あるところに、バルドルという美しい男がいました。バルドルは彼の妻と、兄の三人で仲良く暮らしていました。

妻のナンナは朗らかで明るい性格で、バルドルと共に周りの皆に愛されていました。兄のヘズルは思いやりのある弟思いの優しい人でしたが、生まれつき目が見えず、周りの人から呪われているとして嫌われていました。


ある時、バルドルは夢を見ます。自分が殺されるという恐ろしい夢でした。周りの人は、それが本当になることを恐れ、防ごうと努力しましたが、遂に彼はロキという男にだまされた兄ヘズルの手によって殺されてしまったのです。

ヘズルはバリという幼い少年に敵討ちとして殺され、ナンナは悲しみのあまり胸が張り裂けて死んでしまいました。



その後、世界は混乱に陥り、悪が蔓延り大きな戦争が起きて、神は死に世界は焼き尽くされてしまいました。

世界が一度終わってしまった後、バルドルとヘズルは新たな世界の神として生まれ変わったのでした。


*****





ここ最近の世界状況は悪くなるばかりである。


長年続いた王政に国民が反感を抱き、各国で一揆や暴動が頻発し始めたのが一つの原因。それに比例して賊が増えてしまい、手に負えなくなってしまっているのだ。無法地帯となってしまった国もあるほど酷いのである。



そんな中、いち早く民主制を取り入れて国を安定させた所がある。王政だが未だ猛威を振るう神聖ローマ帝国のさらに北に位置し、アドリア海の女王または真珠、水の都などと呼ばれる貿易の盛んな国。ヴェネツィア共和国である。

昔は王政だったのだが数年前に民主制に切り替え、貿易を始めて経済を、更にとある組織を立ち上げた事により治安までも安定させた素晴らしい国なのである。


この国の恩恵を受けようと、日々多くの国が貿易をしに船を寄越し、ヴェネツィアはいつも様々な国の人で賑わっている。






*****






「南国の美味しい果物だよー」


「美しい絹織物は如何?」


「この装飾品を見ていっておくれ!」



様々な店が建ち並び、更に他国の商人が開くバザールも合わさって賑やかな港町。街中には飲食店や衣服の店などがあるが、珍しい物や新鮮なものを買いたいならば此処に来るに限る。



「ペルラ様だ!」


「此方は如何です?美味しい果物ですよ!」


「こっちも是非見てって下さい!」



人混みの中を縫うように歩く、背格好からして男。フードを付けたポンチョのような服を纏い、フードを深く被って顔を半分隠している。群集は国民も他国の者も、その姿を見るなりざわめき、歓喜の色を浮かべて声をかける。“様“をつけて呼ぶあたり、上の身分なのが窺える。

ペルラと呼ばれた男は果物を1つ買い、しゃくりと一口口に含んだ。味わうようにゆっくりと咀嚼し飲み込むと、口元を少し拭う。



「今日も良い商売ができているようですね」


「えぇ、そりゃあもう!」


「こうやってペルラ様が見回りをして下さったり、立派な港を造って下さったりしたお陰です」


「景気も良くなりましたしね!」



それは何よりですと言って、ペルラはその場を離れる。見回る場所は他にもたくさんあるのだ。


しゃくり、しゃくり。


先程の果実を食べながら、辺りの様子見をする。かけられる声を適当にかわし、ぐるりと港を一周する。



(今日も平和…ですね)



そんな事を思いつつ、念には念をといつものようにとある人物に会いに行く。その人物は、港でも一際大きい船の上にいた。甲板に立ち、総ての船を見渡すようにしている屈強そうな、瑠璃紺の髪を短く切っている鋭い目つきが印象的な男だった。



「ティアマット、首尾はどうです」



船にあげて貰い、男に近づく。ペルラと男、ティアマットとでは身長差がだいぶあるようだった。見上げるようにして訊ねる。



「あぁ、ペルラさん。お疲れさまです」


「何か、変わったことはありませんか?」



そうですね、と口元に手をやり考える。

ティアマットは海軍の軍隊長である。といっても普段は船上からトラブルが無いかなどを監視する警備にあたっているが。仕事の性質上、ティアマットは海や港で起こったトラブルについて詳しいのだ。



「…そういえば、近くの海で船荒らしが頻発しているそうです」


「船荒らし、ですか」


「小規模の海賊が増えているそうですから、きっとそういう類の仕業でしょうね」



成る程、と呟いてペルラは少し首を傾げた。



「まあ、小さかろうが大きかろうが…」




「この国に危害を加えるのならば、容赦はしません」






*****





ティアマットと別れ、ペルラは自分の仕事場である““という建物に戻った。


ペルラが所属しているのは、“十人委員会“と呼ばれる国営組織である。この組織は云わば治安を維持する警察のようなもので、ペルラがしていたような見回りや公衆的な衛生面なども監視、改善するべく日々活動している。ティアマットも十人委員会の一員であり、海上や船上の安全を維持している。


十人委員会の幹部はその名の通り、10人いる。基本的に年に一度、“黄金の書“という権力者や有能な人物の名が書かれた書物から選出されるが、幹部の中でもトップの人物はとある一族が独占していた。


クォーツ家。


この国で最も古い軍事一家であり、先代のボレアス・クォーツは非常に有能な人物であったそうだ。数年前に亡くなってしまった為、今は彼の娘がその地位に就いている。その彼女こそが、ペルラの上司であるのだ。



「船荒らし?」


「はい、ティアマットが証言しておりましたので、確かかと」


「ふぅん。小規模なら、すぐ片付くわよね?」


「えぇ、しかし…」


「保険をつけたい。でしょ?…フェンリルでも連れて行きなさい」



彼女、メランプスとは幼いときからの付き合いである。考えもお見通しのようだ。



「それでは、貴女の望むままに」


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