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17生徒会お茶会(3)

 やたらとあせっている羽飛が気にならなくもなかったのだが、乙彦としては流れに任せるしかないのではと考えている。

 ━━事実はどうせ黙っていれば明るみに出るものだ。あせることじゃない。

 雅弘がかけられた濡れ衣だって、今日ちゃんと水野さんが説明してくれれば問題なく片付くはずだ。たとえ霧島が飛び込んできても、そのあたりをこんこんと説明してやればいいだけの話だ。霧島も全く話が通じないわけではない。それにだ。

 ━━霧島の策も成功したんだろう。

 まがりなりにも立村の気をひくことができたのだからそれはそれでいい。杉本梨南もさぞ安心することだろう。それを伝えてやりたいと思うが、乙彦にそのすべはない。確か、静内が接触していたはずだ。伝えてもらうよう頼むのもいいかもしれない。

 と、考えたところで頭を振って追い出す。

 ━━静内に余計なこと想像させたら面倒だ。

 やはりなるようにしかならないのではないかと割りきった。


 たぶんここだろうと見当をつけてきた、いかにも女子が好みそうなファンシーな木造の建物を発見した。入り口には「貸し切り」と札もある。もう十一時半だ。ちょうどいいタイミングだろう。

「青大附高の関崎です」

 入り口で待ち構えていたお店の人に声をかける。すぐに通してくれた。貸しきりにせざるを得ない程度の広さではあるが、奥の長テーブルだけでもよかったような気がする。やたらと騒がしいので覗きこんでみる。

「だから俺が前から言っただろうが! 無理にあいつに隠し事なんかしないで全部話しとけって! ったくなんだよこれが女の浅知恵だってんだよ」

「ちょっと! 貴史なんなのよその言いぐさ! こちらだって必死に準備進めてきて、やっとなんとかなりそうになったのに、なんでそんな話になってるわけ? それに昨日の段階で情報もらっててなんで今ごろ話すわけ?」

 奥の長テーブルを挟み、さっき顔を合わせたばかりの羽飛が、向き合っている清坂となにやらやりあっている。蚊帳の外といった感じで古川が別のテーブルで水を飲みつつ、店の人に注文を細々としている。乙彦を見つけて即、手招きした。

「早いねえ、関崎もやっぱり朝だちが」

「あれはなんだいったい」

 太陽南中近い時間帯にいつもの古川の切り出しは似合わない。無視して状況を尋ねた。古川もわざとらしく大きなため息をついた。

「まあ、ねえ。羽飛ももっと早く美里に言っとけばねえ。せめて私に言っておいてくれればいくらでもなんとかしたのにさ、そう思わない?」

「思うもなにも、ああいがみ合う理由が俺には理解できないんだが」

「要はあれよ。せっかく本条先輩の計画通りに進めていて、なんとか丸く納められるように持っていってたのにね。土壇場でひっくり返るようなことが起きるってことよ。たまったもんじゃあないよね」

 その間にも清坂は羽飛を前にわめきたてている。もう乙彦は眼中にないらしい。それ以前に来たことに気づいていないのかもしれない。

「前からあんたに言ってたじゃない! 私はこの学校で新学期以降これ以上騒ぎを大きくしないために、こうやってきっちり話し合いする場所をもうけたかったんだって! そのために立村くんも来ないこと確認してオールメンバー用意したのよ。立村くんが来たらもうなにもかも台無しじゃない!」

「おいちょっと待てよ。美里、霧島のことより立村かよ!」

「当たり前じゃない! 霧島くんなんかなんとかなるのよ。それこそ立村くんが面倒見てくれるから任せておけばいいの。けどここで私たちが計画したことが立村くんにばれたら、もうあの人の性格考えてみなさいよ、縁切られるよ絶対に!」

「それはねえよ。だって立村言ってたもん。清坂氏に怒られたくないってな」

「私が怒っても縁切ったりしないわよ。立村くんがぶちきれたら、すべての人間関係を放棄するよ。わかってるでしょ一年前のこと思い出しなさいよ!」


 ━━ちょっと待った。お前ら、本来議論する話ではないところでヒートアップしているのか。

 羽飛の話していた、「霧島が場をかき回しにやってくる」ことでびびっているのであれば理解もできる。もしそうなったらなったで、雅弘を守る立場で行動すればいいだけのことだ。また立村がやって来たとしても、雅弘と顔を合わせるのは気まずいかもしれないがなんとかこれも乙彦が仲介とってもいい。

「古川、俺には話が読みきれないんだが、なんで立村がここに来ると言う話になっているんだ?」

「あんたが教えたんじゃないの」

 あきれたように古川が問いかけた。確かに話のたねにはなったがそんなに驚くことでもないだろう。

「俺は、今朝、立村が野々村先生と駅前を歩いているのを見たと伝えただけだが」

「よく考えてみな。立村は日曜の午前中、親の車でピアノのレッスンに行ってるんだよ。たまたまそこに同じくお弟子さんの野々村先生が一緒にいて、駅前でお茶程度ならまあ、美里も面白くないかもしれないけれどもわかるよ」

 忘れていた。立村は合唱コンクール以降もピアノを続けていたのだ。

 古川は小声で乙彦に囁きかけた。

「美里たちが騒いでいるのはそういうことじゃなくて、今、この現場に立村が来るんじゃないかってことを危惧しちゃってるの! ゆいちゃんの弟が来るんだったらある程度読めているから反撃できるよ。けど、立村がそれを追ってきちゃったら」

「古川、なんでここで立村が来ると断言するんだ? 単にピアノの稽古帰りに食い物くってさあ帰ろうってだけかもしれないぞ」

「関崎もにぶいねえ」

 あきれたように上から見下ろす古川。何様のつもりだろうか。

「立村は、昨日の段階で羽飛に連絡してきてたんだよ。霧島がここの店で私たちが集まることを確認して来る可能性があるってね。ついでにいうと今日明日本当は、本条先輩が立村の家にお泊まりデートしているんだから、身動きとれないはずなんだよ。ピアノ終わったら本条先輩と一緒に遊んでいるはずなんだよ。それがだよ、なぜあの野々村女史と一緒に出歩いてるわけ? 本条先輩をおっぽといて、そんなこと普通する? するってことはもしかしたら、ここに来ることが目的だからじゃない? 立村が霧島の行動を読んだってことは、それを阻止するために来ても不思議じゃないよねえ」


 

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