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17生徒会お茶会(1)

 久しぶりののんびりした朝だった。

 日曜ということもあり今日は早朝バイトも休みだ。

「おとひっちゃん、今日はどこ行くんだい」

「生徒会の集まりがあるから学校に行く」

 いや、これは若干ずれがある。生徒会役員を含めた集まりがあることはあるのだが、公的なものではない。しかも学校構内に向かうわけではなく、青潟公園ほとりの喫茶店。さらに言うなら、

「それでついでに雅弘も用事があって来るんだ」

「雅弘くんも、まあ、そっちの学校の生徒会と付き合いあるのかい」

 細かい内容は母に説明してもしょうがないので頷いておき、ご飯たっぷり焼き魚で腹に納め、さっそく自転車で出掛けることにした。清坂生徒会長主催のお茶会は昼からだが、貸しきりなのと色々面倒な問題もあるので早めに行くことにはなっている。といってもまだまだ時間はある。雅弘誘ってその辺走ってみるのもいい。


「おとひっちゃん、早いね」

 まだ佐川書店はシャッターがしまったままだが、雅弘は乙彦に呼ばれてすぐに飛び出してきた。

「時間もあるし久々に身体も動かしたいだろ」

「それ考えてるのおとひっちゃんだけだよ。でもそうだね。天気もまあまあだし、バドミントンでもやろうか」

 そそくさと雅弘が家にもどり、バドミントンのラケットと羽根を用意するのを外で待っていた。生徒会のことにかまけていたけれどもせっかくの春休み、それだけで終わらせるつもりもない。中学時代の仲間たちとどこかハイキングするのもいいだろうし、家族で遠足帰りのカラオケツアーを企画してもよさそうだ。


 しばらく身体を動かして汗をかいたのち、いったん家に戻ることにした。なにせ十一時集合までまだ間がある。

「さっきたんと一緒に行くから俺は遅れていくけどそのあたりちゃんと生徒会の人たちに言っといてほしいな」

 雅弘があっけらかんと言う。

「わかった。あんまり遅れるなよ」

「大丈夫だよ。さっきたんにも昨日ちゃんと伝えておいてあるし、もともと時間守る人だよ。さっきたんは」

 ━━やはり理解しあっているのか。

 息が上がっているせいか、多少疲れがあるのかもしれない。シャワー浴びてから着替えて行くことにしようと思った。礼儀にうるさい青大附高の気風にはなかなかなれないが、そこのところ乙彦も理解しているつもりではある。


 ちょうど十時を回ったところだった。バドミントンも雅弘相手なので本気を出しきれなかったところがある。少し息も落ち着いてきたのでもう一走り、遠回りして行くことにした。青潟駅の人混みもそれなりに増えてきてはいるけれども、まだ午前中だしアーケード下の店もようやく開き始めた程度。走っても邪魔にはならない。

 ━━陸上やりたいよなあ。

 すれ違いぶつからないように走り続ける。駅方面で若干スピードを落としてさらに進む。大通りだとさすがに邪魔になるのだが、さすがに長年通いなれた学区だけに裏道には精通している。ひょいひょい探して走っていく。夜の仕事なのだろうか、これから疲れきった顔で帰ろうとする人たちにもすれ違った。


 ━━あれ? あいつ?

 一瞬見慣れた姿が、乙彦の目の前を横切ったような気がした。それも二人。

 ━━ん? まさかあれ立村じゃないのか? 

 ひとりだったらためらうことなく声かけてやることのできる距離だった。だいたいい十メートル程度か。走っていけばすぐ捕まえられるはずだった。だがしかし、連れらしき人がいる。しかもその人もついでに面識がある。視力はいいほうだ。掠めた姿に間違いがなければ、

 ━━あいつなんで、野々村先生と歩いてるんだ?

 コート姿の立村は、野々村先生らしき女性の背中を静かに追うように歩いていた。会話をしている気配はない。時おり野々村先生が振り返り立村に声をかけている。あっという間に姿は反対側の横道に吸い込まれて消えていった。

 ━━あそこの小道ったら、飲み屋か喫茶店くらいしかないってのに、こんな朝っぱらからどこいくんだあいつ?


 足を止めてしばらく首を捻ってみたがわからない。

 たしか野々村先生とはピアノの稽古で一緒だとか聞いたことがある。しかしこんな朝っぱらから稽古というのも考えにくい。どちらにせよ立村とは近いうちに顔を合わせて和解交渉したいので、その時に聞いてみることに決めた。隠し事はよくない。


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