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4 生徒会冬合宿(12)

 もっとわいわいがやがやしゃべりながら宿題を見せ合うのかと思っていたが、やはり顧問が付き添っている以上はまじめに取り組まざるを得ない。みなそれぞれ細々と冬休み宿題用の問題集を解き続けていた。すでに片付けている奴も乙彦含めてかなりの数いるのだが、

「学校始まったらすぐに実力テストだからな。それ考えるともう一度解き直すなりノート読むなりしたほうがいいぞ」

 いたって正しい鴨河先生のお言葉を頂戴したため誰も何も言えず、ひたすら勉学に勤しむのみ。一時間限定で、もろ名門高校生の気分を味わった。

 途中で鴨河先生が清坂を呼び寄せて別室で何か話をしていた。席を立つ清坂を、羽飛がなんともなしに眺めていた。


「よっしゃああ!」

 六時を回り羽飛がシャープペンシルをたたきつけた。

「めしだめしだめしだ!」

「貴史そう露骨に本能さらけ出すんじゃないの」

 隣りでまじめに勉強していたらしい清坂があきれたようにたしなめた。気づいた難波が更科と顔を見合わせた後、

「気持ちはわかる。これだけしつこくおんなじ問題を解かされたらエネルギーも枯渇するってもんだ」

「そりゃあそうだけど!」

 ぷんぷん文句を言いつつも清坂は立ち上がり、鴨河先生に、

「それじゃあもう、みんな食堂に入っていいですか?」

 問いかけた。乙彦含む会話に入れなかった連中は黙ってノートと教科書を重ねて手提げの中に突っ込んだ。羽飛の気持ちが分からない奴など誰もいないと思う。

「また学食か」

「たぶんそうだろう」

 クラスの合宿とは違い、特にセミナーハウスではまかないさんらしき人がいなかった。休み中というのも関係しているのだろう。ただ学食から出前を取る形式とは想像していなかった。やはり、青大附高には未知なる部分がまだまだ隠れているようだ。まだ実行していない静内含む外部三人組の「青大附属高校探検ツアー」を行う価値はあると見た。

 阿木と泉州のふたりも仲良くしゃべりながら一緒に立ち上がった。なんとなくD組女子同士の行動が目につく。同じクラスだからというのもあるのだろうが、やはり元評議組の奇妙な結束に入っていけないのが一番の原因じゃないのかという気もする。

 ──たった八人しかいないってのに、こんなに無駄な派閥が存在していていいんだろうか。

 今に始まったことではないと分かっていても、やはり落ちつかないものがある。生徒会に入り約二ヶ月。休みを抜くと実質一ヶ月かそこら。まだまとまりを求めるのは難しいだろう。通常なら頼りになる二年の先輩がひとりくらい混じっていてもいいのに諸事情により一年所帯とあいなった現状。しかも会長は同期の女子だ。やりづらさは確かにあるだろう。実際、期末試験後の食事会や折あるごとに清坂ががんばってひとりひとりに声をかけてはいるものの、泉州たちも対応の仕方に戸惑っている様子だ。男子連中にはいたってカジュアルなのになんでだろうとふと思う。

 ──清坂はどちらかいうと、男子たちとしゃべっている方が気が楽なのかもしれない。

 男子限定であれば守備範囲も広いしあの立村とも付き合っていたくらいだ。東堂との諍いが例外だったのだろう。しかし三学期が始まりこれから始まる任期、こうもばらばらでよいのだろうか。乙彦にはどうもひっかかる。

 ──このままではやはり、まずいだろ。


 食堂で全員揃ったところでみな、なんとなく席に着こうとしている。また例のごとく清坂は羽飛と、羽飛の隣りには難波と更科が、反対列には泉州と阿木、乙彦と名倉と。自然といえば自然ではあった。

「席、適当でいいよね」

「いや、すまない、ひとつ提案していいか」

 思い切って手を挙げた。清坂が首をかしげて乙彦に向かい指さしした。

「はい、関崎くん、答えてください」

「この席の配置、パターン化していないか」

 乙彦の隣りでもろ相棒と化している名倉が怪訝そうにしている。悪いがここは名倉にも耐えてもらわないとまずい。

「せっかくの機会だし、座る席をばらばらにしたらどうだろう。くじ引きとかで」

「関崎いきなり何言ってんのよ」

 泉州が面倒くさそうに答える。阿木も同意とばかりに頷く。

「これだけおいしそうな匂いがしてるのにまた席順決めなんて面倒でしょ。早く食べたいよねえ、阿木ちゃん」

「そんなお腹空いてるわけでもないけどそうね」

 阿木も同意する。向かい側で空腹のため苛立ちを隠せないで入る難波もいる。ひとりにこにこしている更科に向かい、

「なんだよまたこんなくだらねえことで」

 文句を言っているのが聞こえてくる。

「いや、くだらないことじゃないんだ。俺としてはせっかくこういう生徒会役員水入らずの席で、交流しないのはもったいないと思っただけなんだ。せっかく交流会を行うとかいろいろ外向きのイベントを考えているんだったらやはり、自分たちの足固めをすることから始めないとまずいんじゃないかと思うんだ」

 羽飛が頷き、

「そだな。関崎いいこと言う。じゃあ悪いんだけどな。美里、とりあえず勝手に席割り振ってもいいか」

 清坂の返事も聞かずにさっさと乙彦の腕をひっぱり自分の脇にしっかと置いた。取り残されたのは名倉ひとりで口を半ばあけている。

「んで、美里、お前入れ替わりで関崎のいたとこ回れ」

「え? 私が? ってことは名倉くんの隣りね」

 驚いてはいるようだが特に反論することなく清坂も名倉に、

「じゃあお邪魔しまーす!」

 明るく微笑みかけた。露骨にそっぽを向くのは礼儀知らずと思えなくもないのだがしょうがないだろう。羽飛の振り分けはまだ続く。

「じゃあ難波、お前な、泉州の隣りだ。理由はだいたいわかってるだろ。渉外同士仲良くやれよ。んで、更科は阿木の隣りに回れ。ひさびさの三C評議コンビで懐かしがってろ。こんな感じでまとめちまってどうよ」

 乙彦が答えようとする前に清坂が笑顔満面で拍手を送り、ちらと鴨河先生の顔を覗き込み何か言いたげな眼差しを送っていた。戸惑っている他の連中も、露骨に最悪な人選ではなかったこともありそれなりに受け入れているようではあった。唯一、哀れな名倉を除いては。

 ──名倉の奴、隣りは清坂、その隣りには阿木もいるということか。女難の相だな。

「関崎、こんなもんでどうだ。まあ俺の隣でしんみり話すのも悪くねえだろ」

「願ったり叶ったりだ」

 機嫌よく乙彦に話しかけてきた。

「んじゃあ、さっさと座って食おうぜ食おう。んで、とりあえずは食ったあと一気に宴会に突入するからな。飲み物も酒なしだけどまあまああるぞ」

 乙彦と羽飛のお誕生席だけが見事に孤島となる。いつのまにか鴨河先生が清坂の隣りに席を移動し、名倉を含めていろいろと語りかけている。文句言いつつも結局難波は泉州といきなり議論をかまし始めているようでもあるし、それなりに空気は交じり合ってきたようだった。


「さっきの貸しを返すとすっか」

 味噌汁を啜った後、羽飛は小声でささやいた。

 


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