雨の積もる季節
降り注ぐ。
雨、と名付けられた、日々積もり続ける透明な何か。かつて人間が検証しようとし、挫折したそれを、ひたすらに仰ぎ見る。
しとどに濡れそぼる重ねた衣は纏わりつくが、気にも留めず見上げ続け…ふと、視線を下ろした。
「しろさま、」
ひたむきに純粋に真っ直ぐに。注がれる視線に、首を一つかしげる。
「なにかえ」
「お召し物を、お持ちしました」
すいと引かれる手に逆らわず、地に突き立てられた大傘へと誘われる。裳裾を重たげに引き摺り――いや、それは僅かに浮いていた。色鮮やかな重ね衣を地に落とし、子供に差し出された白無垢を羽織る。
するすると整えられ、けれど彼女の視線はそこに在らず。真っ直ぐな子供とは対称的に、何も浮かべぬ眸で昊を見上げていた。
その、蒼く澄み切った濡れそぼつ雨空を。
しゃらん、遠くから聞こえる鈴音。
まるで足音のように徐々に近づくそれに、ひくりと狐耳が揺れる。
「お迎えに参りまして」
視線も合わせぬ招かざる客に、諦めたようにひとつ。溜息を落として傲然と俥に乗り込んだ。
それはこの世界の、神の嫁入り。それは狐の、
(おしまい)