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44 オサム様、花火が綺麗ですね


 オレンジの夜景をたたえる城下からオサムコールが聞こえてくる。

 町を揺らすような大音声だ。

 俺は苦笑しながら手を振り返した。

 あんなことがあった後だから領民たちも気合が入っているらしい。


「いやはや。しかし、ダンジョー卿には驚かされますな」


「まったくです。わたくしは見ましたぞ。領民のために最前線で戦う凛々しいお姿を」


「あのような真似、一体誰にできましょうや」


「まことダンジョー卿こそ領主の鑑でございましょう」


 貴族たちも憚りなくそんなことばかり言っている。


 これほどの称賛を受ける資格が俺にあるのかはわからない。

 それでも、努力しようと思う。

 俺には長い時間があるのだから。


 どーん、とオッサミアの夜空に特大の花が咲いた。

 花火大会は夏祭りでもした。

 でも、今回は奮発したので、夏祭りを凌駕する。

 花火は鍛冶屋通りの各職人が威信をかけて作っている。

 個性的だったり、チャレンジングだったり、尖りすぎてスベっていたりと見ていて飽きない。

 職人たちそのものを映す鏡のようだった。


 俺とおぼしき顔花火が上がると、歓声が一段と大きくなった。

 たぶん、トルクレッチェ作の花火だろう。


 最後に共同制作の花火が空を彩る。

 たしか10分で3000発上げるらしい。

 この世界じゃ打ち上げ花火は珍しいようで、貴族たちもすっかり圧倒されていた。


「ウハハハハハ! これはよい! よき酒に、よき肴! 悦楽ここに極まれりよのう! ウハハハハハ!」


 聞き覚えのある笑い声が領主の間に響いた。

 例のウハハおじさんがバルコニーの特等席にでーんと座っていた。

 シュヴァさんからもらい受けた龍界の秘酒を瓶ごとあおっている。

 それ、超VIP向けの酒なんだが……。

 と思ったが、今夜のウハハおじさんは上等な衣装を身にまとっていた。

 どこの誰なんだ、この人……。


「まっことオッサミアはよき町よ! ウハハハハハ!」


「そうだろう。俺の自慢なんだ」


「であれば、わしにとっても自慢となろう」


「……へ?」


 ウハハおじさんはどこからともなく取り出した金色のものをスチャアと頭に載せた。

 ……王、冠?


「陛下、こちらでしたか」


 超VIPの一人がうやうやしくウハハおじさんにすり寄った。

 今、陛下って言った?


「聞きましたぞ。先日はダンジョンに入られたとか。酔狂もいい加減になされませ。御身は王であらせられるのですから」


「え、このおじさん、本当に陛下なの!?」


「あ、これこれ。おじさんなどと不敬ですよ、ダンジョー卿。こちらはエルロキア王国国王、ウーハヴァッハ・ハー・エルロッキア陛下その人なのですから」


 頭が真っ白になった。

 マジか。

 俺も一人で町をぶらつく物好きだが、まさか国王自ら単身ダンジョンをぶらついていたとは。

 マジか……。


「なに、遠慮するでない、ダンジョー卿よ。貴公はわしと杯を交わした間柄であろうが。ウハハハハ!」


「ほう! 陛下と! では、めでたくも国王派の一員ですな! いやあ、まことめでたい!」


 俺氏、知らないうちに知らない派閥に加えられる……。

 よくわからないが、テキトーに合わせて笑っておいた。

 うはは、はは。


「オサム様、花火が綺麗ですね」


 シーフィアがうっとりとそう言う。

 今朝のことがあったからか普段にも増して距離が近い気がする。


「立派な町になりましたね」


「そうだな」


 俺もつくづくそう思っていたところだ。

 オッサミアは立派な町だ。

 いや、立派な領民たちが住む町だ。

 俺一人ではこの町を守ることはできなかっただろう。

 チーム競技はしないと決めていたんだけどな。

 いつの間にか、ナインよりもずっと多いチームメイトができていたらしい。


「みんなみんな、この町にいるすべての人たちがオサム様のおかげで今日を迎えられたのですよ? もちろん、私もです!」


「そうか」


「そうなんですっ!」


 シーフィアの目は出会った頃から何も変わらずピュアで真っ直ぐだった。

 俺は照れ臭くなって花火に目を戻した。


「100周年記念もやりましょうね、オサム様!」


「気が早いな」


「すぐですよ、きっと」


「そうかもな」


 領主と階層主の二刀流。

 これからの50年も山あり谷ありだろう。

 でも、そのほうがいい。

 退屈しなくてすみそうだ。


 夜空の花を眺めつつ、俺はあらためて頑張ろうと思ったのだった。


これにて完結です!

読んでくださった皆様、ありがとうございました!

ほかの作品も読んでいただけると嬉しいです!

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