表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/44

31 ロックオン。――ファイア


「対・飛竜用魔動兵装で勝負じゃ!」


 長兄ワラッフがババンとお題を発表した。

 ドワーフ三兄弟はすでに勝ったような笑みを浮かべている。

 俺の胸がずきんと痛んだ。

『魔動兵装』は冒険者たちが使う戦闘用の魔道具だ。

 最近、まさにその魔動兵装で心臓をぶち抜かれたばかりだった。


「今すぐ勝負じゃ!」


「おいおい、それはないだろう」


 俺は少々あきれ気味に差し出口を挟む。


「君たちは十分に準備してきたのだろう? トルクレッチェにも時間が必要だ」


「ご領主殿、口出し無用に願おうぞ。無理難題に応えてこそ真の職人! できぬとは言わせぬぞい」


 それっぽいことを言っちゃいるが、勝負を有利に運びたいだけだろう。


「トルクレッチェはどうする?」


 俺は傍らでピキる白衣の少女に問いかけた。


「んー、余裕。ありあわせのガラクタで完封よっゆー」


 売り言葉に買い言葉だな。

 とはいえ、さすがに今すぐ勝負じゃ結果は目に見えている。


「トルクレッチェ、準備時間は10分でどうだ?」


「ちょー余裕」


 トントン、カンカンと工房内に作業音が響く。

 あんなに喧嘩腰だった三兄弟もトルクレッチェの作業風景をキラキラした目で見つめている。

 憎むべき敵であるとともに、尊敬すべき職人でもあるようだ。


 トルクレッチェは俺がプレゼントした工具一式をまだ使ってくれている。

 なんだか胸が熱くなる。


「んー、完成……」


 ものの1分としないうちにバズーカ砲らしきものが組み上げられた。

 これで両者準備よし。


 町の中では危険と判断。

 川に面した城壁の上を決闘の舞台とする。


「勝負の内容に対空兵装を選んだのは第六階層を意識してか?」


 第六階層『無限蒼の浮群島』――。

 あそこは青空が無限に広がる階層で、ドラゴンたちのパラダイスだ。


「そうじゃ。職人のわしらはダンジョンなんぞ入ったこともないがの、やはり迷宮攻略の最前線というのは心惹かれるものがあるでな」


 ふむ。

 迷宮都市に生きる者の宿命だな。


「ゆえに、わしらは作ったのじゃ!」


「3か月にも及ぶ長大な年月をかけて」


「あらゆる竜を撃滅せしめる――」


「「超スーパー究極アルティメット魔動兵装ウエポンをな!」」


 声を揃えてそんなことを言われた。

 それはザッツすごいなアメイジング。

 3か月が長大かは知らないが。


「それじゃあ、対決のルールを決めよう」


 俺は城壁の隅に捨て置かれていた石材を持ち上げた。

 大きさは電子レンジくらい。

 重さは300キロほどだ。


「……」


「「…………」」


 トルクレッチェと三兄弟が唖然としている。

 片手で300キロを持ち上げたらそういう反応にもなるか。


「ルールは簡単。俺がこれを空に投げ上げるから、おのおのご自慢の魔動兵装で撃ち落としてくれ」


「うむ。異論はないぞい!」


「んー。ボクも」


「では、まずドワーフ三兄弟から始めよう」


「「ぞい!」」


 三兄弟の魔動兵装は擲弾筒に似ていた。

 一人が固定役で、もう一人が魔力充填役。

 2人がかりで運用するらしい。


「対・飛竜弾、装填完了じゃ!」


「魔力充填よぉーし!」


「ご領主殿! いつでもよいぞ!」


「それでは遠慮なく……」


 俺は石材を大きく振りかぶり、思いっきり空にぶん投げた。

 ずきゅーん、とすごい風切り音がして、石材はあっという間に見えなくなった。

 15秒ほどして、川の遥か向こう、草原のあたりで土煙が上がった。

 思ったより飛んだな。


「ご、ご領主殿……。もっと控えめにお願いできんかの。わし、見えんかったぞい」


「ぼ、ボクも……」


「わはは。申し訳ない」


 遠慮気味に2投目をぶん投げる。


「発射あああ、ぞい!」


 擲弾筒が火を噴いた。

 ぽこん、と間の抜けた音がして砲弾が飛ぶ。

 石材が大きな弧を描いて落ちてきて、砲弾の弾道と重なった。

 川の上で大きな爆発が起きる。

 少し遅れてドーンと胸を打つ轟音。

 水面にたくさん水柱が上がっている。


「なるほど。打ち上げ花火から着想を得たわけか」


 俺は見たまんまを口にした。

 砲弾が子弾をばらまき、子弾が破片をまき散らす。

 翼膜を蜂の巣にされて落ちていく竜の姿がありありと浮かんできた。


「ほう! 一目で見抜くとは、さっすがご領主殿ぞい! ……それで石材のほうは」


「小破って感じだな」


「ぞい……」


 広範囲を攻撃できる利点は、威力が分散する欠点でもあるらしい。


「次はボク」


 バズーカ砲を肩に担いだトルクレッチェが白衣を風になびかせている。

 かっこいい。

 自信のほどが表れている。


「オッサムン、思いっきり投げてくれていいよ」


「よしきた!」


 俺はそりゃあ、と右腕を振り抜いた。


「ロックオン。――ファイア」


 トルクレッチェが引き金を引くと、バズーカ砲から光の玉が飛び出した。

 光の玉は不自然な軌道で曲がった。

 石材に吸い寄せられるように、ぐーんと。


「「な、追尾能力じゃと……!?」」


 三兄弟が同時に叫ぶ。

 空で小さな爆発が起こる。

 木っ端微塵になった石材がバラバラと川に落下した。

 ひと目でわかる技術力の差……。

 これは勝負ありだな。


「んー、まーボクにかかれば余裕」


 勝者がむふんと鼻を伸ばし、敗者トリオが揃って膝から崩れ落ちた。


「わしらの力作が」


「金床娘の1分に負けるとは」


「ぐムム、これでは師匠に合わせる顔がないぞい……」


 まあ、ショックだろう。

 そして、いたたまれない。

 ひげのおじさん3人組が子供に喧嘩売って返り討ちに遭った絵ヅラだ。

 同じおじさんとして心が痛む……。


「ねえねえオッサムン、どっちがすごかった?」


 トルクレッチェがわかりきったことを訊いた。

 俺に問いかけているようで、その目は三兄弟に注がれている。


「「ムっぐぅぅ……! なんたる屈辱!」」


 当然だが、三兄弟はカンカンだ。


「かくなる上はセイフティ解除! 魔力充填量マキシマイズ!」


「わしらの本気を見せてくれようぞい!」


「発射あああ、ぞい!」


 俺は川を横切るものを見て、ハッと息を呑んだ。


「待て。行商船が来てい――」


 間の抜けた砲声が俺の声を掻き消す。

 トルクレッチェもバズーカ砲を構えていた。


「そんなへなちょこ花火、ボクが撃ち落としてあげる」


「待――」


 止める間もなかった。

 光の玉が空に上がった。

 二つは空で交差し、弾き合うようにして向きを変える。

 砲弾は川に落下して水面をぼごん、と盛り上げた。

 光の玉は制御を失っている。

 暴れネズミのように宙をくるくる舞い、あろうことか行商船に突っ込んだ。

 船の側面が弾け飛ぶ。

 そこに……。

 大波が容赦なく襲いかかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ