第89話 ルイとシスター
冒険者ギルド。
「ルーにゃん、ちょっといいかにゃ」
ルイがマスターに呼ばれた。
「はい、大丈夫ですよ」
ルイが承諾する。
そんなルイが連れて来られたのは人目のつかない路地裏だった。
「どうしたんですか?こんなところに呼び出して・・・えっ」
ルイが驚きの声をあげた。
いつの間にかマスターは消え、代わりにシスターがいた。
そのシスターは前にルイを襲ったミカだった。
ミカが手鏡を取り出す。
「これは『写しの鏡』。他人の姿を自身に投影し化けることができる」
ミカが説明する。
「ケテル派との不干渉の契約があるから姿を変えて呼び出させてもらったわ」
ミカは鏡をしまい、今度はペンを取り出した。
「神の御霊よ。神の言葉を届けよ」
その言葉と共にルイは意識を失った。
「・・・はっ!」
しばらく経って、ルイが意識を取り戻した。
「一体何が・・・」
頭を押さえて何があったのか思い出そうとするルイ。
(そうだ!私、シスターに襲われて・・・早く逃げないと)
ルイが目の前のシスターから逃げようとする。
「ごめんなさい!」
シスターが土下座をしながら謝る。
「えっ」
予想外のことにルイが困惑する。
「あなたは魔王の子じゃなかった」
ミカがルイに言った。
ミカが取り戻したペンは教会が抱える宝具の一つだった。
この宝具の力によってルイは一時的に意識を失った。
魔王の子に宝具は効かない。
つまり、宝具が効いたルイは魔王の子ではなかった。
「私は勘違いで善良な一般人であるあなたを殺そうとした」
ミカが自身の罪を告白する。
「決して許されることじゃない」
ミカの目から涙がこぼれ落ちる。
「どんな罰でも受ける・・・私を好きにして」
ミカが額を地面に擦りつけながら言った。
「顔をあげてください」
「はい・・・」
ルイの言葉にミカが顔を上げる。
「罰はいらないし、あなたを好きにしたりもしません」
ルイがミカの言った内容を断る。
「ただ、もうギルドの人達に酷いことをしないと約束してください」
ルイがミカに言った。
「うん、約束する。もう二度とあなた達には手を出さない」
ミカが約束した。
彼女は自身の過去の行いを本気で反省していた。
「・・・」
ルイがミカを見つめる。
既にミカへの恐怖心は消えていた。
それ以上に泣いているミカの姿が気になった。
(彼女とのわだかまりは消えた)
でも、ルイの心は晴れていない。
目の前の泣いているミカを放っておくことはできなかった。
ミカが抱いた後悔を楽しい思い出に変えてあげたい。
ルイはそう思った。
「今からギルドに遊びに来ませんか?」
ルイがミカに聞いた。
「えっ、でも私は・・・」
戸惑うミカ。
言い訳を探す。
「ケテル派と不干渉の契約があるので・・・」
断ろうとするミカ。
「バレなきゃ大丈夫なんですよね」
ルイがニヤッと笑う。
「服、交換しましょうか」




