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偽物勇者とメイド天使  作者: ああああいい
第3章 教会編
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第86話 アナスタシアと盗賊団

 郊外にある廃墟。

 ここはハートの盗賊団のアジトだ。


 アナスタシアは正体を隠し団員Aという仮の名でこの盗賊団の世話になっていた。


「でも、驚きました。アナスタシアさんがシスターで、しかも教祖様だなんて」


 ルイがアナスタシアの髪をとかしながら話す。

 実は二人はお互い女性だということをずっと前から知っていた。


 ルイにいたってはアナスタシアの名前も事前に教えてもらっていた。


「ごめんなさい。ルーにゃんさんに隠し事はしたくはなかったんですが・・・こればかりは明かすわけにはいかなかったんです」


 アナスタシアが申し訳そうな顔をする。


「いえ、お気になさらず・・・でも、どうして盗賊団に入ったんですか?目的は冒険者ギルドの視察でしたよね」


 ルイが疑問を口にする。


「いくつか理由があるんですけど・・・一つは体が弱くて冒険者にはなれなかったこと。もう一つは教会の仕事で街を離れる機会が多いということです」


 盗賊達は普段から街の外で別々の仕事をしている。

 そのためアナスタシアが教会の仕事で街を離れてもバレない。


 そして盗賊達は毎日ギルドの酒場にご飯を食べに行く。

 ギルドとの関係もしっかりある。


 ギルドとつかず離れずの関係・・・それがアナスタシアには都合が良かった。


「リズさんが来た際は監視するために酒場で働かせていただきました。すぐにクビになっちゃいましたが・・・」

「えっ、リズさんが竜人って気づいていたんですか!?」


 アナスタシアの言葉にルイが驚く。


「はい、どことなくベルと同じ匂いがしたので」


 アナスタシアが笑いながら言う。


「それとギルドにはクレアさんがいらしたので変装する必要もあって・・・」


 クレアはパテル派の元シスター。

 宗派を違うとはいえケテル派の教祖であるアナスタシアのことを知っていた。


 そこで男性に化け、盗賊団にいる名もなき団員・・・団員Aとなることで彼女からの疑いの目が向かないようにした。


「何よりルーにゃんと一緒に暮らせる!」


 アナスタシアがルイに抱きつく。


「うー、ルーにゃんと離れたくないよー」


 アナスタシアがわがままを言う。


「そうだ、結婚しよう!そうすれば、ずっと一緒に・・・」

「はいはい、シスターのみなさんが教会で待っていますからそろそろ行きましょね」


 ルイがアナスタシアを引き剥がす。


「おーい、入っていいか?」


 お頭が部屋の外から声をかける。


「うん、入っていいよ。親父」


 ルイが答える。


「そろそろ時間だが大丈夫か?」


 お頭が心配そうに聞く。


「は、はい。今行きます」


 アナスタシアが急いで身支度を整える。


 ・・・今日はアナスタシアが盗賊達とお別れする日。

 ギルドへの視察が終わり彼女は本格的に教会に復帰する。


「元気でなー。団員A」

「離れ離れになっても俺達は仲間だー」

「アナスタシアちゃーん、困ったことがあったらいつでも言って。すぐに駆けつけるから」


 盗賊達が各々お別れの言葉を言う。


「みなさああん、今までありがとうございましたああ。うわーん」


 アナスタシアが感極まって泣いてしまう。


「おい、おい。可愛い顔が台無しだぜ」


 お頭がハンカチを手渡す。


「ありがとうございます・・・ずぴー」


 アナスタシアがハンカチで鼻をかむ。


「こちら洗って返しますね」


 アナスタシアがお頭に言う。


「いや、いいよ別に。こっちで洗っとくから」


 お頭がハンカチが受け取ろうととする。


「だ、駄目です!」


 アナスタシアはハンカチを返さない。


「これは洗って返します。だから・・・また、ここに来てもいいですか?」


 アナスタシアが伏目がちに聞く。


「・・・!」


 その言葉に盗賊達が目を丸くする。


「「アハハハッ」」


 そして笑った。


「よいしょっと」

「あー、私のハンカチ!」


 お頭がアナスタシアからハンカチを奪い取る。


「ハンカチなんて関係ねー。いつでも、帰って来な。ここはお前の家でもあるんだからな」

「そうっすよ。いつでも遊びにきて欲しいっす」


 アナスタシアを明るく迎え入れる盗賊達。


「みなさん・・・本当にありがとうございます」


 再び目に涙を浮かべるアナスタシア。

 そしてその涙を指で拭った。


「さよならは言いません・・・みなさん、またね」


 アナスタシアが笑顔を浮かべながら再会の希望を込めた挨拶をする。


「おう、またな」

「またねー」

「またなー」


 盗賊達も同じ挨拶をした。


 アナスタシアとして教会に戻ったとしても、彼女が盗賊団の大切な団員の一人であることに変わりはなかった。

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