第85話 お家
街の片隅に小さな一軒家が建てられた。
「なあ、ランドルフ。これが噂の教会のなのか?」
冒険者の一人が半信半疑でランドルフに聞く。
「いや、俺に聞かれても・・・」
戸惑うランドルフ。
あの後、冒険者達はアナスタシアの誘いを受けた。
それで教会が建てられたのだが・・・
「わあ、私達のお家だー。ねえ、早く入ろう。アナスタシアー」
小さな子供がアナスタシアにねだる。
「あはは、そんなに急がなくてもお家は逃げたりしないよ」
アナスタシアが笑いながら言う。
「あっ、みなさん。いらしていたんですね」
お家の前にいた冒険者達に気づいてアナスタシアが声をかける。
「アナスタシアが敬語使ってる変なのー」
子供がそれを見て笑う。
「アナスタシア様はあちらの人達とお話があるから先にお家に入ってましょうね」
「はーい」
シスターに連れられて子供達がお家に入っていく。
その中には魔物もいた。
「・・・」
ランドルフが無言でアナスタシアを見つめる。
「そんなに見つめてどうかしましたか?」
「いや・・・子供と話してるときのあんたは俺達のよく知る団員Aみたいだったから、つい・・・」
ランドルフがアナスタシアの疑問に返す。
「あー、うん。ぶっちゃけ人前では教祖としてのキャラを作ってるからね。あっ、でも冒険者ギルドで話した内容は本心だよ」
「ああ、分かってるよ。疑っちゃいないさ」
団員Aっぽく振る舞うアナスタシア。
そんな彼女に心配は杞憂だと伝えるランドルフ。
「団員Aはここまで。ここからは教祖アナスタシアとしてお話させていただきます」
アナスタシアが冒険者達を真っ直ぐ見つめる。
「あの子達は色々な事情で親を失った子供達です」
冒険者達の疑問に答えるようにアナスタシアが話し始めた。
「私達ケテル派のシスターの活動は遠征がメインとなるため、基本的に街にいません。なので私達には本来、教会は必要ありません」
アナスタシアがケテル派のシスターについて話す。
「そこで教会という名目で子供達が暮らすためのお家を建てさせてもらっています」
アナスタシアがお家を・・・そこに入っていった子供達を優しく見守る。
「もちろん、シスターを数人残して子供達の世話に当たらせています。しかし、私達だけでは手が回らなくなることも・・・」
アナスタシアが心配そうに言う。
「まあ、そんときは俺達も手伝うから安心しろ」
「ありがとうございます」
ランドルフの言葉にアナスタシアがお礼を言う。
「あ、あとパテル派の教会は私達のお家と違くて、なんかこう芸術的な感じなんですよ」
アナスタシアが宗派による教会の違いを教えてくれる。
「パテル派のシスターは私達と違って街での慈善活動がメインなので普段から教会に住んでます。なので、その分すごい大きくて壮観なんですよ」
パテル派の教会の話ばかりするアナスタシア。
どうやら彼女はケテル派の教会が名ばかりの小さな家であることに冒険者達がガッカリしたと思い込んでいるようだ。
「俺はケテル派の教会、すごくいいと思うぜ。親しみがあるし、家の方が住んでて家族って感じがするからな」
ランドルフが子供達が楽しそうにしているお家を見ながら言う。
「えへへ、ありがとうございます。私もすごく気に入ってるんです」
アナスタシアが嬉しそうに笑った。




