第84話 私の夢
「私の名前はアナスタシア。ケテル派の教祖をしています」
団員Aが自己紹介をする。
「いや、ちょっと待て。シスターって男でもなれるもんなのか?」
冒険者のひとりが団員Aを見て言う。
「えっ、いや。私は・・・」
「アナスタシア様。失礼します」
シスター達が団員Aを取り囲んでわちゃわちゃする。
そして離れた。
そこにいたのは・・・シスター服を着た可愛いらしい女性だった。
「ふうー、びっくりした」
団員A・・・アナスタシアがつぶやく。
「団員Aが女性・・・?」
冒険者達が驚く。
だが、それ以上に驚いている者達がいた。
ハートの盗賊団である。
「あいつ女だったのか」
「気づかなかったっすね」
「いや、それより教祖の方がやばいだろ」
「俺達、不敬罪とかになったりして・・・」
盗賊達が慌て出す。
「はい、みなさん。落ち着いて。話を戻します」
アナスタシアが場を仕切る。
「まず、一つ・・・感動しました」
アナスタシアが話し始める。
「マスター、リズさんを受け入れたフォザリア王国のみなさん・・・その種族を超えた愛に私はひどく感銘を受けました」
アナスタシアがギルドにいる人達を見回す。
「私はそんなみなさんと共に歩んでいきたいと思いました」
アナスタシアが自身の胸に手を当てる。
「私には夢があります。人と魔物が差別なく手を取り合っていける世界を作るという夢が」
アナスタシアが力強く夢を語る。
「ギルドのみなさん・・・どうか私と同じ夢を見ていただけないでしょうか」
アナスタシアが頭を下げる。
それにシスター達も倣う。
「あ、頭を上げてくれ。アナスタシアさんにシスターのみなさん」
ランドルフがシスター達に言う。
「ランドルフさん・・・ありがとうございます」
シスター達が顔を上げる。
「その・・・気持ちは嬉しいし、願ってもない話ではあるんだが・・・」
冒険者達には一つはっきりさせなければいけないことがあった。
「俺達は冒険者だ。ときには魔物と戦わなきゃいけないこともある・・・だから、あんたらと同じ夢を見続けることはできない」
ランドルフがはっきりと明言した。
「それに関して少し・・・いや、大きな語弊がある」
ベルがアナスタシアに代わって答える。
「私達のいう共存は全ての魔物に対してではない。あくまで人間に危害を加えない善良な魔物に対してだけだ」
ベルがケテル派の掲げる魔物との共存について説明する。
「ギルドの討伐対象となる魔物の多くは人類に害をなす魔物だ。むしろ、そういった魔物は積極的に排除すべきだと考えている」
ベルが自身の考えを話す。
「私は魔物だが人間が好きだ。人間と共に生きていきたいと思っている」
ベルが拳を握りしめる。
「だから、それを邪魔する・・・人に危害を加える魔物は許さない」
ベルの目は魔物への怒りに満ちていた。
「大丈夫ですよ。ベルが良い子だということはシスター達みんな分かっていますから」
アナスタシアがベルに抱きつく。
「アナスタシア様・・・恥ずかしいから離れてくれ」
ベルが照れながら言う。
「あっ、ごめんなさい。つい・・・」
アナスタシアがベルから離れる。
そして冒険者達に向き直す。
「世の中には善い人もいれば悪い人もいます。それは魔物も一緒です」
アナスタシアが話す。
「大切なのは善悪の判断。私の大好きなこの国の人達はそれが正しくできている・・・私はそう思っています」
アナスタシアがとびっきりの笑顔を見せた。




