第77話 最低な『お願い』
「ずっと、君にお礼を言うべきだったのに・・・言えなかった」
アレスが自身の思いを吐露する。
「だって、それを言ったら君と僕の関係が終わってしまうから」
師匠と弟子。
リズの嘘から始まったこの関係が。
「君と決闘したあの日、僕はギルドの人達から見放され・・・ひとりになった」
アレスは思い出す。
あの時のことを。
「全部、僕が悪かったんだ」
僕がひとりになったのも。
リズが怖い思いをしたのも。
それなのに・・・
「君は恐怖を押しのけて・・・」
アレスの目から涙が溢れ落ちる。
「立ち上がったんだ・・・僕をひとりにしないために!」
涙が・・・あふれる思いが止まらない。
『お前が私の師匠だ』
リズのあの言葉は・・・アレスをひとりにしないための嘘だった。
「君が僕を守ってくれた・・・僕は君に救われたんだ!」
自分を救ってくれたリズへの思いが止まらない。
「君が僕を救ってくれたように。今度は僕が・・・」
駄目だ。
それ以上言っちゃいけない。
「僕が君を救いたいんだ!」
やめろ、言うな。
優しいリズはその願いを断れない。
それなのに・・・言葉はあふれて止まらない。
「お願いだ・・・僕に君を救わせてくれ」
アレスはリズに最低な『お願い』をした。
弱い自分を見せてリズの逃げ場をなくした。
そんなアレスをリズが優しく抱きしめる。
「分かった・・・私を救って、アレス」
リズはその願いをアレスごと受け止めた。




