表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
偽物勇者とメイド天使  作者: ああああいい
第1章 来訪者編
7/169

第7話 冒険者ギルドと盗賊団

 ハートの盗賊団。

 女性のハートを盗むのが彼らの目的だ。

 そのため盗賊団を名乗っておきながら食糧や金品を盗んだりはしない。

 だが、生きていくめには金が必要だ。


「起きたな、お前ら。仕事に行くぞ」

「「おー」」


 盗賊達はその腕っぷしを活かし肉体労働に励んでいる。

 そして日銭を稼ぎ終えた後はーー


 冒険者ギルド。

 ギルドが発行したクエストを受けに多くの冒険者が訪れる施設だ。


「受付嬢さん。薬草探しのクエストありますか」

「はい。こちらになります・・・にゃ」

「ありがとうございます」


「この前のドラゴンの調査クエストどうだった?」

「あーあれ、ただの太ったトカゲだったよ」


 ギルドは今日も多くの冒険者や情報を得にきた商人達で賑わっていた。


「ちょっと、失礼するぜ」


 盗賊達は人混みをかぎ分けて進んでいく。


 盗賊達は冒険者ではない。

 当然、クエストを受けにきたわけではない。

 冒険者ギルドに併設されている酒場に食事をしにきたのだ。


「よし、この席にするか」

「お頭、これ食べたいっす」


 盗賊達はメニューを見ながら何を食べるか決めていく。


「すいませーん。注文お願いするっす」

「はーい」


 注文してから数分後ーー


「こちら注文の品になりますにゃ」

 

 猫耳をつけたメイド服のウエイトレスが料理を運んできたくれた。


「いやー、相変わらず美味しいっすね。お頭」

「ああ、そうだな」


 ギルドの酒場は安くて美味い。

 その上、冒険者以外でも利用可能だ。


「ルイ坊ちゃんもここで食えばいいっすのにね」

「まあ、あいつは仕事先でまかないが出るらしいからな」


 盗賊達は基本的に街の外で働くことが多いがルイだけは別で街の中で働いていた。


 過去にルイに仕事先を聞いたこともあったがーー


「ルイ坊ちゃん。どこで働いてんすっか」

「お前らからかいに来るつもりだろ。絶対に教えねー」


「ちぇー、こうなったらルイ坊ちゃんの仕事先を探しに行くしかないっすよ、お頭」

「やめとけ。他人が入れないような機密性の高い仕事なんだろ」


「機密性?なんすっか、それ。難しい言葉使われても分かんないっすよ」

「他人に知られたらまずい仕事ってことだよ」


「知られたらまずい・・・犯罪とか?」

「ああ、知ったら俺達は消されるかもしれねぇ」

「ひー」


 体を震わせてびびる盗賊達。


「いや、普通の接客業だよ。とりあえず、恥ずいから俺の店にはくんな」


 訂正しつつ、念を押すルイ。


「「はーい」」


 渋々、納得する盗賊達。


「でも、たまたま行った店にルイ坊ちゃんがいたら、どうするんすっか?」

「そんときは余計な事言わずに普通の客として振る舞え」

「分かったっす、お頭」


「ルイもそれでいいな」

「ああ、それでいいよ。ありがとな、親父」


 それからしばらくして、仕事先でまかないが出るからとルイは盗賊達と一緒に夕食を食べなくなった。

 それは盗賊団にとって大問題だった。

 なぜなら、盗賊団内で料理ができるのはルイだけだったからだ。

 このままでは夕食抜きになってしまう・・・そこでルイが教えてくれたのがこの冒険者ギルドの酒場だった。


「紹介してくれたときはてっきりここで働いてると思ったんすけどいないっすよね。裏で料理作ってんすかね」

「いや、接客業って言ってたから料理人ではないだろ」


 この酒場で接客業と言ったらウエイトレスしかいない。

 お頭はウエイトレスに目をやる。

 猫耳をつけメイド服に身を包む彼女達は全員女性だ。

 当然、男のルイはいない。


 だが、お頭にはルイがこの酒場を勧めた理由に関して心当たりがあった。

 それは・・・


「まーた、肉ばっか。ちゃんと野菜も食べる・・・にゃ」


 ウエイトレスと同じ猫耳メイドの女性が頼んでもいない野菜料理をテーブルに置いていく。


「あ、ルーにゃん。今日も可愛いっすね。えへへ」


 盗賊団の団員がルーにゃんに話しかける。

 ルーにゃんは団員に手を振ると、そのままクエストの受付カウンターに戻っていった。


 そう、ルーにゃんは酒場のウエイトレスではなく、冒険者ギルドの受付嬢だ。

 にも関わらず盗賊達の健康を案じて、こうして野菜なんかの料理を勝手に持ってくる。

 酒場に人が多いときは臨時でウエイトレスの手伝いをすることもあるが、日常的に料理を運んでくるのは盗賊達にだけだった。


 おそらく、ルーにゃんは・・・


(十中八九、ルイの彼女だろうな)


 それがお頭の推測だった。


 ルイはルーにゃんから冒険者ギルドの酒場を知って盗賊達に教えた。

 そしてルーにゃんはルイから盗賊団のことを知った。

 そう考えれば、ルーにゃんが盗賊達を気にかけることにも説明がつく。


(ふっ、いい彼女を見つけな。ルイ)


 お頭は頼んだビールをグイッと飲む。


「なあ、みんな聞いてくれて」

「どうした?そんな真面目な顔して」


 盗賊団の団員の一人が話を切り出す。


「ルーにゃんに告白しようと思うんだ」

「ごふっ」

「お、お前。みんなのアイドルーーいや天使!・・・のルーにゃんに告白だと!?」


 むせるお頭。

 動揺する盗賊達。


 いや、盗賊達だけだはない。

 酒場にいた他の客。

 強いてはクエストを受けに来た冒険者達にも緊張が走る。


 ルーにゃんはこの冒険者ギルドの受付嬢にしてみんなのアイドル的な存在だった。

 中にはルーにゃんに会うためにギルドに通っている奴もいるくらいだ。


 ルーにゃんを狙う男は多い。

 これまで多くの男性がルーにゃんに告白し玉砕していった。


(どうせ今回も振られるだろう)


 その場にいる多くの人がそう思うと同時に・・・


(でも、もしオッケーしたら)


 不安も感じていた。

 その理由は・・・


 その場にいた人達は盗賊達のテーブルに置かれた野菜を見る。

 あれはルーにゃんが置いたものだ。

 こんなことするのは盗賊達にだけ。


(いるんじゃないか?あの中にルーにゃんの好きな相手が)


(俺達の天使が自分以外の男と付き合う?)


 さっきまでの喧騒が嘘のように酒場は静寂に包まれた。


 その静寂を破ったのはお頭だった。


「やめときな。俺の野生の勘が言っている」


 ーー『ルイの彼女だから』。この言葉は口に出さず、グッと飲み込んだ。

 それはお頭ではなく、ルイ本人が打ち明けるべきことだからだ。


「そ、そんな。でも、お頭が言うななら、間違いねーや」


 クエストの受付カウンターに立つルーにゃんを見つめる団員。


「どうかお幸せに」


 そう言うと、団員はテーブルにうつ伏せになり泣いた。

 他の盗賊達が団員を慰める。


「豚に真珠。美女と野獣って言うだろ」

「美女と野獣は違くないか?・・・まあ、高嶺の花って奴だ。豚には豚に相応しい牧草が見つかるさ」

「・・・それで慰めてるつもり?」


 いじける団員。


「えっ、あー、そうだ。トリュフが見つかることもあるさ。豚だけに」

「・・・トリュフ好き。食べたことないけど」


 少し元気を取り戻す団員。


 こうしてハートの盗賊団、名もなき団員Aの初恋は失恋に終わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ