第57話 アレスと決闘
アレスとユウキは木刀を握りしめながら向かい合っていた。
「驚いたよ。ユウキさんが決闘を申し込んでくるなんて」
アレスがユウキに言う。
「・・・強くなりたいんです」
ユウキが言う。
「それで僕と決闘?他にもやりようはあると思うけど・・・」
アレスが疑問を浮かべる。
「それは・・・これから失礼なことを言います」
「構わないよ。続けて」
アレスがユウキの言葉の続きを促す。
「リズさんと決闘したことがありましたよね」
「そうだね・・・」
当時のことを思い出してアレスが苦い顔をする。
あれはアレス自身にとっても辛い記憶だった。
「あのときのアレスさんはとても恐ろしかった」
ユウキの手が震える。
当時のアレスを思い出して。
「でも、リズさんは立ち上がった。見ているだけの僕なんかよりずっと怖かったはずなのに!」
ユウキが叫ぶ。
震える手を押さえつけようと。
ユウキの言葉でアレスは思い出す。
(そうだ。そしてリズは僕に言ったんだ・・・弟子にしてくれと)
アレスの思い出したくない辛い記憶。
でも、辛いだけじゃない。
リズと出会った・・・アレスがリズに救われた大切な記憶だ。
「僕はリズさんみたいになりたい」
ユウキが言う。
「恐怖から逃げない自分に」
ユウキが木刀を構える。
「あなたに立ち向かえる勇気が欲しい」
ユウキが自身の思いを打ち明けた。
(・・・)
アレスはユウキの言葉にショックを受けていた。
自身がユウキにとっての恐怖の象徴になってしまっていたことに。
でも、それ以上に思ったことがある。
(ユウキさんはユウキさん自身のことを誤解している)
アレスは思い出す。
これまでのユウキのことを。
呪術師との戦いのときにランドルフを庇ったこと。
捉えられた人質を助けるために丸腰でボウガンを持った相手に突っ込んだこと。
どれも褒められた行為ではではない。
でも、ユウキは自身の命をかえりみずに立ち向かってきた。
「勇気なら既にある。誰よりもね・・・僕はそう思ってるよ」
アレスが木刀を構えた。
かーん。
決闘の開始を告げる音が鳴る。




