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偽物勇者とメイド天使  作者: ああああいい
第2章 ギルド編
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第55話 愛に狂う

「ごめんなさい、ごめんなさい」


 ルナは部屋に戻った後、罪悪感から一人で謝り続けていた。


『コンコン』


 部屋の扉をノックされルナが顔を上げる。


「い、今開けます」


 ルナが扉を開けた。


「遅くなってしまって申し訳ございません。一人で来たので時間がかかってしまいました」


 訪ねてきたのはマリアだった。

 部屋の外を見ると、他のシスター達が扉を開けてマリアのこと心配そうに見ていた。


 どうやら、マリアは部屋を間違えまくったようだ。

 それでも他のシスター達はマリアの意思を尊重し案内はせず無事にたどり着くのを見守っていた。


「どうしても二人っきりで話したかったのです」

「分かりました。どうぞ・・・」


 ルナがマリアを部屋にあげる。


「そ、それでどういったご用で・・・」


 ルナがマリアに聞いた。


「怒りに来ました」

「ひ、ひい」


 マリアの言葉にルナが怯える。


「理由は分かっていますね」

「わ、分かりません」


 ルナはマリアから目を逸らす。

 本当は分かっていた。

 でも、怒られるのが怖くて嘘をつく。

 もう、手遅れなのに。


「洗脳の宝玉のことです」


 マリアが話す。


「制限を追加しましたね。内容は・・・」


『洗脳の対象範囲を街の住人のみとする』


「あっ、あっ」


 その言葉を受けてルナの表情が絶望に変わる。


 最近街に来たばかりのユウキ、メイ、リズ。

 街の郊外に住んでいる盗賊達。

 彼らは街の住人と判断されず洗脳の対象外となった。

 当然、盗賊達と一緒に暮らしているルイもだ。


「で、でも制限を追加するのは違法じゃなくて・・・」


 ルナは一生懸命言い訳を考える。


「そのままだと危険なので影響範囲を狭めました」


 ルナが続ける。


「関係ない人を巻き込まないため措置です。だから・・・」


 ルナがその目に涙を浮かべながら言い訳を続けようとする。


「ルナ。あなたが魔王の子と判断したルイという子は街の住人ではありません。洗脳の対象外です。これでは魔王の子かどうか判断できません」

「・・・!」


 マリアの言葉にルナが絶句する。

 もう言い訳のしようがない。


 ルナはルイを魔王の子にしたてあげるために洗脳の宝玉に制限を追加した。


「あなたのしたことは許されません。どうしてこんなことしたのか理由を教えてくれますね?」


 マリアがルナに尋問する。


「・・・妬ましかったんです」


 ルナが話す。


「どうして?私とあの子は何が違うの?」


 アイドルとして人々の前に立つルイを思い出す。

 彼女の顔は常に笑顔だった。


「あの子は人々からとても愛されていた」


 あのライブの光景が頭の中に鮮明に蘇る。


 妬ましい。妬ましい。


「私だって愛されたい。みんなの愛を独り占めしたい」


 愛が・・・愛が欲しい。

 あの子が消えれば・・・

 その愛の矛先はどこにいく?


 ほんの少しでいいから・・・


「私にちょうだい」


 ルナは愛に飢えていた。


 ・・・八つの枢要罪と呼ばれる悪徳がある。

 『暴食』、『色欲』、『強欲』、『憂鬱』、『憤怒』、『怠惰』、『虚飾』、『傲慢』。

 

 これらは第一の想念に続く八つの想念である。


 第一の想念。

 この世における最大の罪。

 それは『自己愛』。


 ルナはその罪を犯した。


「ルナ。膝枕をしてあげます」


 マリアが自身の太ももを叩いて言う。


「えっ、はい」


 驚きながらも言う通りにするルナ。


「ふふ、どうですか?」

「凄く・・・いいです」


 マリアの太ももに挟まれて幸せな気持ちになるルナ。


「他にして欲しいことはありますか?」


 マリアが体を倒して顔を近づけてくる。


「い、いえ、そんな。恐れ多い」


 ルナが顔を真っ赤にしながら断る。


「もっと素直になって」


 マリアがルナの耳元でささやく。

 距離感を誤ったマリアの柔らかい唇がルナの耳に触れた。


 びくん、とルナの体が反応する。

 それは膝枕をしているマリアに伝わった。


「我慢しないで。あなたのためなら・・・どんなことでもしてあげたいの」

「あっ、あっ」


 マリアの言葉にルナの理性が壊れていく。


「キスがしたいです・・・」


 ルナは欲望に負けた。


「分かりました」


 マリアがルナの顔に触れる。

 その手は頬から始まり少しずつ移動していく。

 そしてルナの唇に触れた。


「ここですね」


 マリアは手が触れた箇所に優しく口付けする。

 二人の唇が触れた。


 そしてゆっくり離した。


(あっ、ん、マリア様・・・)


 ルナの心臓の鼓動が激しさを増す。


(マリア様、マリア様・・・)


 ルナの心はマリアでいっぱいだった。


「ルナ・・・」


 マリアが優しい声色でルナに話しかけた。


「誰かに嫉妬しそうになったら今のキスを思い出して」


 マリアがルナにお願いをする。


「あなたが嫉妬した相手以上の愛をあげるから」


 はあはあ、と息をこぼすマリア。


「私の愛を受け止めて」


 マリアはその口からだらしなく涎を垂らしながら。

 ルナにおねだりした。


「・・・!」


 ルナはルイがどうでもよくなるほどの。

 たった一人からの大きな愛を受け取った。


(そうだ。マリア様だけで良かったんだ)


 ルナは起き上がる。

 マリアの体に自身の体を触れさせながら。

 すがるように。


「マリア様、愛してます。この世界の何よりも」


 ルナは恍惚の表情を浮かべながら言った。


 ・・・罪を犯したシスターは許されない。


 厳しく罰せられる。

 しかし、マリアだけは例外だった。


 『許す』ことを許されている。


 シスター達が姉妹なら。

 教祖であるマリアは母だった。

 全てのシスターに無償の愛を与える。


 いかなる罪を犯したとしてもマリアだけは見捨てない。

 犯した罪ごと愛してくれる。


(マリア様・・・)


 ルナはその名を心の中で呼ぶ。


 マリアの愛がルナの心を虜にする。

 もはや、彼女の中にルイへの嫉妬は存在しない。


 この行為は褒められたものではない。


 シスター達はマリアに依存していき。

 目の見えないマリアもまたシスター達に依存していく。


 それでもパテル派のシスター達はこの共依存を続けていく。


 ・・・己の正義を見失わないために。


 揺るぎない正義のために彼女達は・・・愛に狂う。

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