第51話 洗脳の宝玉
洗脳の宝玉には四つの制限がある。
一つ目、操れるのは目視できる範囲。
二つ目、操られた人間は意識を失う。
三つ目、宝玉の持ち主がその場から移動すると洗脳は解ける。
四つ目、魔王の子には効かない。
四つ目は全ての宝具に共通する制限だ。
教会のシスターはこの制限で相手が魔王の子かどうかを判断する。
・・・。
(人のいないところに行かなくちゃ)
ユウキはルイを連れて街の外を目指していた。
そして・・・
「痛っ」
街の入り口で人にぶつかってしまった。
「ん?ユウキとルーにゃんじゃねーか。そんなに急いでどうした?」
ぶつかった相手はハートの盗賊団のお頭だ。
盗賊団はちょうどギルドに向かっているところだった。
「猫耳メイドのユウキちゃん!?・・・結婚しよう」
目をハートにしてとんでもないことを口走る団員A。
「いや、だからユウキは男っすよ」
他の盗賊が団員Aに冷静になるよう促す。
「ごめんなさい。今は話している時間がないんです」
ユウキが盗賊達に別れを告げる。
「そうなのか?気をつけてな」
お頭が返事する。
「逃がしませんよ」
ミカがユウキ達に追いついた。
「みんな逃げて!」
ユウキと一緒に逃げていたルイが叫ぶ。
「逃げろって一体・・・」
盗賊達がルーにゃんの言葉に戸惑う。
「神の御霊よ。神の言葉を届けよ」
ミカが洗脳の宝玉を掲げた。
しーん。
辺りが静寂に包まれる。
「・・・」
盗賊達は宝玉を掲げたミカをじっと見つめる。
そして・・・
「なあ、ユウキ。あいつ何したんだ?」
お頭がユウキに質問した。
他の盗賊達も頭にクエスチョンマークを浮かべている。
「えっ」
「なっ」
ユウキとミカが驚いた声を上げる。
「みなさん、なんともないんですか?」
「えっ、なんともないっすけど」
ユウキの質問に盗賊達が答える。
「ありえない、ありえない」
ミカが宝玉を持ってない方の手で頭をかきむしる。
「あなた方もその女と同じ魔王の子だというの!?」
ミカがルーにゃんを指差していった。
「魔王の子?何言ってやがる・・・ルイは俺の息子だ!」
お頭がミカの言葉に反論した。
「「「えっ」」」
お頭の言葉を聞いたユウキ、ルーにゃん、盗賊達が驚きの声をあげた。
(ん、なんで俺はルイの名前を出したんだ?)
言った本人も驚いていた。
「親父・・・気づいてたのか?」
ルーにゃんがお頭を見て言う。
「えっ」
お頭がルーにゃんの言葉に驚く。
「ん、んん?」
お頭がルーにゃんの顔をじっと見つめる。
ルーにゃんは女の子という先入観があった。
しかし、その先入観を取っ払って見てみると・・・
(どう見てもルイじゃねーか!?)
(ルイ坊ちゃんだー!?)
衝撃の事実に盗賊達が心の中で驚く。
「と、当然だろ。俺はお前の親父だぜ」
「そ、そうっすよ。ルイ坊ちゃん」
盗賊達は嘘をついて気づいてた風を装う。
(・・・本当は気づいてなかったな)
盗賊達を見て団員Aが思う。
彼は知っていた。
ルーにゃんの正体がルイだということに。
なぜなら、彼は・・・
「うるさい、うるさい。神の言葉を理解しない異教徒どもめ!」
ミカが騒いでいる盗賊達に激怒する。
(なんで?なんで・・・宝玉が効かないの?)
信心深いミカは焦っていた。
絶対的であるはずの神の力が効かない事態に。
(神が私を見捨てた?・・・ありえない、ありえない)
ミカが顔を歪め、その目からは涙がこぼれ落ちる。
神はミカを見捨ててなどいない。
そもそも宝玉が持つのは神の力ではなく呪いだ。
ゆえに、目の前の彼らに呪いが効かなかったのはただの宝玉の仕様にすぎない。
しかし、ミカはそれを知らない。
気づけない。
・・・気づきようがない。
「神の言葉を聞けー!」
自暴自棄になったミカが宝玉でお頭に殴りかかる。
「おっと」
攻撃をかわすお頭。
「くらえ!」
お頭がカウンターのパンチをミカに決める。
「ぐっはぁ」
パンチを受けたミカが膝から崩れ落ちる。
そしてミカの手から宝玉がこぼれ落ちた。
ぱきっ、という音ともに地面に落ちた宝玉が真っ二つに割れた。




