第48話 魔王の子
この世界は勇者の嘘に守られている。
ありとあらゆる願いを叶える神の手から。
しかし、時に強い願いは『嘘』を貫通して叶えられてしまう。
それは世界の終わりを早める危険な行為である。
即刻、排除しなければならない。
『魔王の子』
教会のシスターは願いを叶えた人間をそう呼んでいる。
そして・・・その排除もまたシスターの役割である。
これは世界を守るために必要な行為である。
・・・。
教会にある禁庫。
ここには宝具が納められている。
宝具には簡易的な呪いが込められていた。
これは呪術師が使う呪いよりも制限が多く危険性は少ない。
教会のシスターはこれを神の御霊と呼び任務遂行のために使用する。
「・・・」
シスターが一つの宝具を手に取る。
『洗脳の宝玉』
占い師の使う水晶玉に似たこの宝具は名前の通り人を洗脳する力を持っている。
シスターはこの宝玉を持って禁庫を出た。
「きゃっ」
運悪く扉の前を通りかかった盲目のシスターにぶつかり転ばせてしまった。
「大丈夫ですか。マリア様」
マリアの手を引いていたシスターが心配そうに言う。
「ありがとうございます、ミカ」
目の見えないマリアはミカに支えてもらいながら立ち上がる。
「お姉様!ちゃんと前を見てよ!マリア様が怪我したらどうすんの」
ミカが扉から出てきたシスターに怒る。
「ご、ごめんなさい」
「謝る相手は私じゃないでしょ」
自分に謝ってきた姉にミカが怒る。
「ごめんなさい。マリア様」
「いえ、お気になさらず。ルナの方も怪我はありませんか?」
謝ってきたルナにマリアが心配そうに聞く。
「・・・私は大丈夫です」
ルナが答える。
「あれ?お姉様。なんで宝具を持ち出してるの?」
ミカがルナに聞く。
「・・・」
ルナが黙る。
「・・・ルナ?」
黙るルナにマリアが心配そうな顔をする。
「・・・フォザリア王国の冒険者ギルドで魔王の子を見つけました」
ルナが話し始めた。
「討伐の許可をいただけないでしょうか」
ルナがマリアにお願いする。
ルナはルイのライブを観にきていたあの女性だった。
「それは・・・」
「駄目よ」
ミカがマリアより先に答える。
「次は私の番でしょ。そうですよね、マリア様」
ミカがマリアに聞く。
「そうですね・・・お気をつけて」
マリアが許可を出した。
「くれぐれも魔王の子かどうかの確認を怠らずに」
マリアが念を押す。
「分かってますって」
ミカが返事する。
「それじゃあ、お姉様。宝玉を」
ミカが宝玉をねだった。
「・・・失敗したら許さない」
宝玉を差し出しながらルナが言う。
「私が失敗?ありえないわ」
ミカが宝玉を手にその場を離れた。
早速、魔王の子の討伐に向かうのだろう。
「マリア様、手を・・・案内します」
「ありがとうございます、ルナ」
ルナはマリアの手を引きながら教会の中を歩いていく。




