第47話 神様のいる世界
この世界には神様がいます。
神様はとても優しいのでどんな願いでも叶えてくれます。
そう・・・どんな願いでも。
そのせいで世界は大変なことになってしまいました。
誰かの善意が別の誰かを苦しめ。
悪意を持った誰かが他者を傷つける。
世界は・・・終わりへと向かっていきました。
神様は叫びます。
『誰か・・・私を殺して』
その叫びは一人の人間に届きました。
その声を聞いた人間は思います。
声の主を救いたい・・・と。
『魔王』
そう魔王です。
人間は神に別の名前を与えました。
『悪い魔王が邪悪な願いを叶えてる』
人間がみんなに言います。
『だから、私は悪い魔王を倒しに行きます』
それを聞いたみんなは人間を応援します。
いつしか人間は『勇者』と呼ばれるようになりました。
『悪い魔王は封印しました。これでもう、邪悪な願いが叶うことはありません』
みんなは喜びました。
勇者の功績を本に残します。
多少の脚色を加えて。
『めでたし。めでたし』
・・・。
嘘です。
魔王なんていません。
『もう願いは叶わない』
みんなにそう思わせるための嘘でした。
神様が願いを叶えずに済むように。
神様の願いを叶える力を魔王という概念に置き換えて・・・
封印したことにしました。
この世界は勇者の優しい嘘で守られています。
しかし、勇者は後悔しています。
『他に方法はなかったのか・・・』
優しい神様を『悪』に貶めることでしか救えなかったことを。
『ありがとうございます。勇者様』
神様はそんな勇者に感謝の気持ちを伝えます。
神様は願いを叶える力の大半を失いました。
もう無差別に願いを叶えることはありません。
今の神様にできるのはささやかな願いを叶える程度です。
神様はそのささやかな願いで勇者に称号を与えました。
『勇者の称号』
何の力もない名前だけの称号です。
ですが、それでいいのです。
勇者には既に『勇者』と呼ばれるだけの実績があったのですから。
こうして、勇者は名実ともに本物の勇者となりました。
『みんなが幸せになれますように』
神様は今もみんなを見守っています。
みんなのささやかな願いを叶えながら。
・・・。
・・・。
勇者が地下に残した封印の箱。
その空っぽの箱の中に神様はいません。
当然、魔王も。
魔王は勇者がついた嘘。
架空の存在なのですから。




