第44話 君の心は動かない
親子を見送った後。
「あれで合ってたか?」
リズがアレスに質問した。
「何を?」
アレスが聞き返す。
「アレスが冒険者になった理由」
「意識したことは無かったけど・・・君の言った通りかもしれない」
リズの言葉を受けてアレスが考える。
(姉さんは僕に守られる存在じゃなかった・・・)
だから、僕は代わりに守れる存在を探して冒険者になった。
(それが僕自身が気づかなかった本心なのかもしれない)
アレスが隣にいるリズを見る。
(彼女はいつも他人のことを考えている。そして・・・)
その人が言われて一番嬉しいことを言おうとする。
・・・例え嘘をついてでも。
「・・・」
アレスは気づいていた。
あの日、リズが自分に言った言葉。
『アレス、私を守って』
あの言葉が嘘だということに。
(・・・リズは優しい嘘つきだ)
アレスの表情が暗くなる。
「大丈夫か、アレス?」
リズがアレスを心配してアレスの手を握る。
どきんっ。
アレスの心臓が跳ねる。
「・・・」
アレスがリズを見つめる。
「・・・?」
リズが不思議そうな顔をする。
(今もそうだ。君の一挙一動が僕の心をかき乱す。それなのに・・・)
君はそうじゃない。
いつもと変わらない涼しい顔で僕の手を握る。
「・・・っ」
アレスがいきなりリズを抱きしめる。
少しでもリズをドギマギさせたくて。
「本当にアレスは抱きつくのが好きだなー」
そんなアレスの背中を優しく撫でながら抱き返すリズ。
「・・・」
アレスがリズを無言で引き剥がす。
彼女は何も変わらない。
涼しい顔して僕の前に立つ。
君の心は・・・今日も動かない。




