第41話 王と青年
フォザリア王国、王の間。
『コンコン』
誰かが王の間の扉をノックする。
「入れ」
王が扉の向こうにいる人物に言う。
「ありがとうございます」
礼を言いながら一人の青年が入ってくる。
その青年に王は心当たりが無かった。
「何のようだ?」
王が青年に問いかける。
「私には夢があります」
青年が言う。
「その夢を叶えるためにはあるものが必要だと考えています・・・王、あなたの持つ太陽が描かれてたそのペンダントが」
青年が王が胸につけているペンダントを指差す。
「そのペンダントには自身の姿を変える力があると聞いております」
「お前は姿を変えて何をするつもりだ」
青年の言葉に王は問う。
「姿を変えるのが目的ではありません。私が欲しいのはその力です」
青年が王の勘違いを訂正する。
「そのペンダント・・・本当に見た目を変えるだけですか?」
青年が王に問う。
「見た目だけじゃない。体そのもの変化させているのではないですか?」
まるで、呪いで魔物に変えられた人間のように。
あるいはその逆。
「呪いは上書きできない・・・だが、あなたのそれは違う。何度でも変化させられる」
青年が王を真っ直ぐ見つめる。
「それは世界の摂理に反する力だ・・・千年前に封印されたことになっている魔王のように」
青年はとんでもないことを言う。
「我が魔王だとでも?」
王が青年に言う。
「まさか。私は王が同じ力・・・の一部を持っていると言っているのです」
青年が王の言葉を否定する。
「教会のシスター達はそのペンダントとよく似た・・・月の描かれたペンダントと星のペンダントを持っている」
青年が話を続ける。
「そのシスター達は神の奇跡を使うと聞き及んでいます」
青年が探るような目で王を見る。
「太陽と月のみだ・・・星は過去の神父が作ったもの。なんの力もない」
「そうだったのですね。神の奇跡は否定しない・・・と」
満足いく答えを得られて青年が笑う。
「お前は何者だ?どこまで知っている」
王が青年を睨む。
「私はただの一般人です。凄いのは私の幼馴染達です。彼らについて話をしても?」
「構わん。話せ」
王が青年に命令する。
「私には三人の幼馴染がいます」
青年が自身の幼馴染について語っていく。
一人目はランドルフ。
彼は戦闘に長けている冒険者です。
二人目はジャンヌ。
彼女は魔導士で神の命題の研究に勤しんでいます。
三人目はマリベル。
彼女は教会で神父をしています。
「ふむ、なるほど」
王は頷く。
命題の研究者に教会の神父。
目の前の青年が話した情報は彼女達から得たものだろう。
一人目のランドルフと言うのはよく分からんが・・・
「ランドルフは強く勇敢な男です。私は彼こそが伝え聞く勇者に相応しいと確信しています」
青年が王の疑問に答えるように言う。
「勇者は称号として受け継がれるもの。相応しいも何もない」
「そうですか。それは残念です」
青年が王の言葉に残念がる。
「・・・神の力が欲しいのならマリベルという神父に頼めばいい」
王がもっともなこと言う。
「それは無理なんです。彼女とは喧嘩して・・・その仲違いしてしまったんです」
青年が気まずそうに言う。
「最初に言っていた夢の件か?」
「・・・はい、その通りです。はっきり言われました」
あなたの夢は素晴らしい。
でも、あなたのやり方は間違っている・・・と。
「なので教会にはもう頼れません。大切な幼馴染の邪魔をしたくないので」
青年が困った顔をしながら言う。
「我ならお前に力を貸すと?」
「いえ、見知らぬ相手なら奪っても心が痛まないので」
青年が悪びれもなく言う。
「とんだ一般人がいたものだ」
王がため息をつく。
「お前のことはよく分かった。では、聞かせてもらおうか」
王が青年を見る。
「お前の夢を」
王が青年に問いかけた。
「世界平和」
青年ははっきりと言いのけた。
「・・・馬鹿げた夢だ」
「でも、誰かが成し遂げなければいけない夢です」
青年の瞳は真っ直ぐでそこに一切の陰りはない。
「・・・」
王が窓の外を見る。
そろそろ夜が明ける。
「今日はもう帰れ」
「しかし・・・」
王の言葉に青年は食い下がる。
「また会う機会をくれてやる・・・場所は図書館でいいか?姿を変えて会いに行く」
「・・・!ありがとうございます」
王の言葉にに青年が礼を言う。
これが先代国王と後に国王となる青年ーーアルベルトの出会いだった。




