第40話 薬草とドラゴン
「薬草千個だ。約束通り娘を返してくれ」
ギルドからもらった千個の薬草を商人は目の前の魔導士に渡す。
「確かに。受け取ったわ」
魔導士が薬草を受け取る。
「パパー」
「良かった。無事で」
商人は解放された娘を抱きしめる。
商人がギルドに話した内容は真っ赤な嘘だった。
本当は人質にされた娘を解放するために必要だったのだ。
(まあ、千個に満たなくても解放するつもりだったんだけど・・・)
魔導士は商人が持ってきた薬草を見る。
(発破をかけるため無茶な数を要求をしたのにちゃんと千個用意するなんて・・・優秀な商人だこと)
嬉しい誤算に魔導士は頬を緩ませる。
魔導士が商人の目の前に金貨の入った袋を置く。
「薬草千個の代金よ。持っていきなさい」
「必要ない」
商人は金貨を受け取らずに娘を抱えてその場から去っていった。
魔導士は気にした素振りを見せずに薬草を抱える。
(一度に運ぶのは無理。何回かに分けて運びましょう)
薬草を抱えながら魔導士は地下への階段を降りていく。
階段を降りた先には巨大なドラゴンがいた。
「今治してあげるわ」
魔導士は薬草をすり潰して竜に塗りたくる。
薬草は人を癒すが魔物には毒だ。
傷口に塗ろうものなら激痛が走る。
「・・・」
しかし、ドラゴンは何も言わない。
それもそのはず。
そのドラゴンはとうの昔に死んでいた。




