第34話 アレスと約束
「おい、その辺にしとけ」
男が仲間に言う。
「でも、兄貴。こいつ俺らを殺そうとしたんすよ」
男の仲間がアレスを蹴飛ばしながら言う。
「所詮、ガキのしたことだ」
男が言う。
「おい、アレス。これに懲りたら、もう変な気起こすんじゃねーぞ」
次はないぞ、男が忠告する。
(力が欲しい。目の前の悪魔達を殺せるだけの力が・・・)
アレスは涙を流しながら己の無力さを呪った。
「これで最後か」
悪魔達が死んだ。
殺したのは一人の女性だった。
悪魔達は相手が女だから油断した。
いや、油断してなくても同じ結果だっただろう。
それほどまでに彼女は圧倒的だった。
「よお坊主、無事・・・じゃねーな。酷い傷だ。盗賊共め」
女は今しがた殺した盗賊達を睨む。
「・・・」
アレスは女の背中の上で揺れていた。
傷は既に治療された後だった。
「・・・なぜ、助けたんですか。僕は盗賊の仲間ですよ」
アレスが口を開く。
「そうは見えなかったけどな」
女が言う。
「盗賊達が人を・・・友達を殺すのを止められなかった」
アレスの目から涙が溢れる。
「後悔してどうした?」
女が問いかける。
「何も出来なかった。僕は盗賊を殺せなかった」
悔しくて声が震える。
「僕は友達を守ることも、その仇を取ることもできなかった」
僕は弱い。
その事実にアレスが打ちひしがれる。
「僕はきっとこれから先も・・・」
弱いままなのだろう。
「それでもお前は抵抗するんだろ?」
「えっ」
女の言葉にアレスが驚く。
「傷の具合を見れば大体分かる。二回だな?さしずめ、友達を守ろうとしたときと、仇討ちをしようしたときだろ」
「・・・うん」
アレスが頷く。
「なあ、お前。私の子供にならないか?」
女がとんでもないことを言う。
「どうして?」
アレスが聞き返す。
「・・・娘がいるんだ」
女が語り出す。
「私は仕事がらあまり娘の側にいてやれねー」
女が続ける。
「だから、娘を守ってくれる奴がいると安心できる」
「・・・分かったよ」
女の言葉にアレスが頷く。
「僕はあなたの子供になる。そしてあなたの娘を守る」
その日、アレスは決意した。
大切なものを守れるように強くなることを。
それなのに・・・
「・・・」
アレスは無言で自分が守るはずだった女性の姿を見つめる。
「どうしたのー?疲れちゃったー?」
魔物を斬り伏せながらアン言う。
現在、アレスが倒した魔物の数は十体。
それに対して姉のアンは倍の二十体。
(僕は娘さんを守るって約束したのに・・・)
アレスがアンを睨む。
(どうして娘のあんたが僕より強いんだよ!)
アレスに行き場のない怒りが込み上げた。




