第30話 アレスと手料理
「僕の部屋にいた理由がまだだったよね」
シャワーを浴びて着替えたアレスが言う。
正直この件に関してはどうでもよくなっていたがゲロの件を忘れたかったから話を戻した。
「師弟なんだから寝食を共にするのは当然だろ?」
「全然どうでもよくなかった!」
リズのとんでもない発言に驚く。
「あのね、リズさん。僕らは師弟である前に男と女で・・・」
「師弟の絆は男女のなんちゃらよりも重い!」
「くっ、師弟への夢が強すぎる・・・」
終始押され気味のアレス。
(威厳が・・・師匠としての威厳が足りない)
威厳不足に悩み始めるアレス。
「そんなことよりこっちだ。冷めてしまう」
リズがアレスの手を引く。
冷める・・・みんなの僕を見る目が?
「ふっ」
自重気味に笑うアレス。
「よし、召し上がれ」
アレスが案内されたのは食卓だった。
テーブルの上には豪華な食事があった。
(正直、吐いたばかりで食欲はないけど・・・)
アレスがリズを見る。
リズが期待に満ちた目でアレスを見ていた。
(女の子の手料理を残すという選択肢はない!)
アレスが料理を胃の中にかきこむ。
「美味しいか?」
リズが聞く。
「うん、美味しいよ。リズさんは料理が上手だね」
アレスが料理の感想を言う。
「作ったのはアンだぞ」
「おえええ」
「アレスがまた吐いた!?」
アレスが吐いたのにリズが驚く。
「ごめん。僕は姉さんの料理は食べられないんだ」
事情を説明するアレス。
「でも、最初は美味しそうに食べてたよな?」
疑問を浮かべるリズ。
「姉さんの手料理だって知らなかったからね」
アレスが言う。
「じゃあ、言わなければ良かった」
後悔するリズ。
「もし、そうなってたら、僕は自身の腹を掻っ捌いて料理を取り出すことになっていた」
「そこまでして食べたくないのか!?」
アレスの発言に驚くリズ。
「・・・でも、私の手料理なら食べるんだな?」
リズが質問する。
「それはまあ・・・うん」
肯定するアレス。
「・・・待ってろ!美味しい手料理を食べさせてやるからな」
リズが家を飛び出していく。
部屋に一人残されたアレス。
「あいつ・・・何のために僕の弟子になったんだ」
剣の稽古をつけてもらうためじゃないのか?
何がなんだか分からなくなるアレス。
「とりあえず追いかけるか」
アレスがリズを追って外に出た。




