第21話 竜人の女の子
その女の子は人間ではなかった。
竜人。
地上最強の生物ドラゴン。
その上位種である。
竜と人。
二つの姿を持つ竜人は戦闘力では純粋なドラゴンに及ばない。
それでもドラゴンの上位種と呼ばれているのは環境への適応力の高さに起因する。
ドラゴンはその巨体ゆえに生息範囲が限られる。
竜人にはその制約がない。
人間という小柄な肉体を得ることで地上のほとんどの場所で活動が可能となった。
当然、人間の街での活動も可能だ。
完全な人間の姿に化けた竜人を人は見分けることができない。
この世界で人間の街で暮らせる唯一の魔物。
それが竜人だった。
「リズちゃん。何、食べたい?」
「バニラとチョコレート!」
美味しそうにアイスを食べる親子の姿が竜人の女の子の目に入った。
(親子か・・・)
女の子に親はいない。
生まれたときから一人だ。
帰る家もなく各地を転々としていた。
そんな彼女には夢があった。
王様になるという夢が。
女の子にとってドラゴンと王様は一緒だった。
どちらも強く畏怖される孤高の存在。
ただ違う点が一つだけあった。
王には付き従う家臣が守るべき民がいる。
そんな王に女の子は憧れた。
女の子は親子を見つめる。
(王様になれば私にも・・・)
そこから先の言葉を女の子は飲み込む。
「わー、美味しそうだね」
女性がアイスを食べている子供に声をかける。
「お兄さんも一口食べる?」
「いいの?ありがとう」
子供が女性に・・・
(えっ、男なのか!?)
驚く女の子。
「はい、あーん」
「あーん」
大きく口を開ける男?
「やめてください。ユウキ様」
後ろから来たメイド服の女性がアイスを食べようとした男の後頭部をチョップする。
「痛いよー、メイさん」
痛がるユウキ。
「子供にたからないでください」
メイと呼ばれた女性が注意する。
「あはは、お兄さん達面白いー」
「ふふ」
親子が二人のやりとりを見て笑う。
四人は談笑しながらその場を去っていく。
(私もそろそろいくか)
向かう場所は冒険者ギルド。
そこには強い人間が集まっているという。
「私は地上最強の王になる」
女の子の決意は揺るがない・・・今はまだ。




