第0.8話 私の勇者
剣撃を躱したスライムがミコトに殴りかかる。
『スライムパンチ!』
ぽよーん。
スライムのパンチはあまりにも弱くミコトに何のダメージも与えれなかった。
「やられたー」
ミコトが倒れる。
『えっ』
「ステータスオープン」
驚くスライムを他所にミコトが自身のステータスを確認する。
「うん。ちゃんと、勇者の称号がスライムさんに受け継がれてる」
ミコトが起き上がる。
「勇者の称号は勇者に勝った相手に受け継がれるの」
ミコトがスライムに説明する。
「勇者の称号には何の力もない。それでも千年前から今日までただの一度も失われることなく受け継がれてきた」
ミコトがスライムを見る。
「この称号があれば何があってもあなたはこの世界に戻ってこれる。そう思ったの」
『ミコトさん・・・』
スライムは理解した。
ミコトは今日、僕に負けるためにここに来たんだ。
「私ね嫌われ者だったの」
ミコトが自身のことを話し始める。
「見ただけでその人のことが何でも分かっちゃうから不気味だって」
ミコトが当時のことを思い出し苦しい顔になる。
「いつも一人で本ばかり読んでた。本は私を嫌わないか、ら・・・」
ミコトは苦しそうな顔で言葉に詰まる。
「でも、あなたに会えた!」
ミコトが顔をあげる。
「あなたと過ごした日々はとても楽しくて」
ミコトの目から涙が溢れだす。
「大嫌いだったはずのこの力のおかげであなたと話すことができて」
話す度に楽しかった思い出が頭に浮かんで涙が溢れ出す。
「今ではこの力が合って良かったって思ってるの」
全部あなたがいたから。
「千年前の勇者も創作の勇者もみんな人々に希望を与える存在だった。だからあなたは私の・・・」
涙が止まらない。
これまでのこと。
そしてこれから訪れる別れのこと。
自分の全ての思いをこの言葉に託して伝える。
「あなたは私の勇者なの」
その言葉を聞いてスライムは自身の中に何か熱いものが芽生えるのを感じた。
『必ず帰ってくるよ。魔王を連れて』
スライムが魔王を封印している四角い箱に飛び込んだ。
これがスライムの最後の冒険となる。
「行ってらっしゃい」
それがスライムとミコトが交わした最後の言葉となった。




