第0.1話 スライムとワーウルフ
「ここまでか・・・」
狼と人間の中間の姿をした魔物、ワーウルフは自らの死期を悟っていた。
体から流れるおびただしい血は人間との戦闘でおったものだ。
「誰だ!」
近くの茂みが揺れたのに気づいてワーウルフが叫ぶ。
すると、茂みから一匹のスライムが飛び出してきた。
「なんだスライムか」
人間でないことに安堵するワーウルフ。
「ん?」
よく見るとそのスライムは人間が使う鞄を引きずっていた。
(なぜ、スライムがそんな物を?)
スライムが鞄から何かを取り出す。
それは薬草だった。
そしてスライムはその薬草を飲み込んでしまった。
「馬鹿!何をしている」
思わず叫ぶワーウルフ。
薬草は人間の傷を癒すが魔物にとっては毒だ。
傷口に塗ろう物なら激痛に見舞われ最悪死に至る。
故に魔物は薬草を避ける。
薬草の群生地に魔物がいないのはこのためだ。
「早く吐き出せ!」
『ぺっ』
スライムは言われた通り薬草を吐き出す。
ただし、ワーウルフに向かって。
べちゃり。
スライムの体内で消化されべちょべちょになった薬草がワーウルフの傷口にかかる。
(あっ、俺死んだわ)
まさか最後はスライムに殺されるとは・・・
これから来るであろう激痛に身を任せながらワーウルフは目をつぶった。
(・・・?)
いつまで経っても激痛が訪れない。
ワーウルフは恐る恐る目を開けた。
するとスライムがワーウルフの傷口に包帯を巻いているところだった。
薬草が塗られた傷口は少しずつ癒されワーウルフは命の危機を脱した。
「ありがとう助かったよ」
スライムに礼を言うワーウルフ。
『どういたしまして』
スライムは体の一部を隆起させる。
スライムには声帯がないため喋ることができない。
だから、体の一部を動かしてコミュニケーションを図る。
「しかし、なぜ薬草が魔物に効いたんだ?」
疑問を口にするワーウルフ。
それを聞いたスライムが薬草を持つ仕草をする。
どうやら、実際の動きを見せて説明するようだ。
「ふむふむ。薬草を直接傷口に塗ると毒だけど、一度体内で消化すると毒が消えて魔物に効くようになる?」
こくっ、と頷くスライム。
「そうだったのか。知らなかった」
驚くワーウルフ。
すると、スライムが鞄から分厚い本を取り出しワーウルフに差し出す。
「この本にさっきのことが書かれているのか?」
ワーウルフが本を開く。
しかし・・・
「人間の言葉で書かれて読めん」
スライムがもう一冊本を取り出す。
それは人間の言葉を魔物語に翻訳する翻訳本だった。
「悪いな。この分厚い本を翻訳しながら読むのは俺には無理だ」
ワーウルフは本をスライムに返す。
スライムはしょんぼりしながら本を受け取った。
その後ワーウルフが元気になったの確認してからスライムは別れを告げた。
「元気でな」
『そちらも』
スライムが体の一部を隆起させて返事する。
スライムは大切な本が入った鞄を引きずりながら歩き出す。
スライムはまだ冒険の途中だった。




