第17話 呪われしXXXX
村の奥に呪術者の魔物は鎮座していた。
「グガガ、ゲゴゴゴガ(さて、次はどこを攻め落とすか)」
魔物は人間とは異なる言語を発声しながら思案する。
「グガッ(ん?)」
魔物はこちらに突っ込んでくる人影を見た。
「グガガ、ゲコゲコバハガ(また冒険者か。無策で突っ込んでくるとはなんと愚かな)」
魔物が杖を構える。
いかに屈強な冒険者といえども呪いの前では無力。
そんな魔物にスライムを身に纏ったランドルフが声を張り上げながら突っ込む。
「うおおおお」
「グガッ(はっ!?)」
ランドルフの異様な格好にたじろぐ魔物。
「グガガ、ゲゴゴゴ(いや、落ち着け。格好に惑わされるな)」
魔物はすぐに気を取り直して杖を構え直す。
「グゲゲ、ババコガ(愚かな冒険者に呪いあれ)」
魔物が放った呪いがランドルフ目掛けて飛んでいく。
しかし、呪いはスライムの鎧にあたると掻き消えた。
「グガッ(馬鹿な!?)」
防げないはずの呪いが防がれて動揺する魔物。
その隙をランドルフは逃さない。
ランドルフの放った一撃が魔物の胴体を真っ二つに切り裂く。
「グガガガー」
断末魔を上げて崩れ落ちる魔物。
そして、ランドルフにくっついていたスライム達が剥がれ落ち、元の人間の姿に戻った。
その中には冒険者アレスの姿もあった。
「やりましたね。ランドルフさん」
遠くで見守っていたメイとユウキがランドルフの元に駆けつける。
「ユウキと村人達のおかげだな」
そう言って、ユウキの頭をわしわしと撫でるランドルフ。
「えへへ」
嬉しそうに照れるユウキ。
こうしてユウキ発案のスライムで身を守って呪術者を倒そう作戦は成功に終わった・・・はずだった。
「グガガ(まだだ!!)」
上半身だけになった魔物がランドルフ目掛けて呪いを放つ。
死後の呪い。
術者の命と引き換えに放つこの呪いは術者の死後も残り続ける。
未来永劫消えることのない呪いがスライムの鎧を失った生身のランドルフに襲いかかる。
「危ない!」
ユウキがランドルフを庇うように前に飛び出す。
「ユウキ!」
「ユウキ様」
叫ぶ二人。
しかし結果は変わらない。
魔物の放った死後の呪いはユウキに命中した。
「・・・」
呪いを受けたユウキは固まったまま動かない。
「嘘だろ」
「そんな・・・」
絶句する二人。
「グガガ、ゲゲハ(ギャハハ、絶望しろ。人間ども)」
その様子を見て魔物が下卑た笑い声を上げる。
今回のアレス、そして一つの村を巻き込んで事件はユウキの犠牲とともに幕を閉じ・・・
「あれ?何ともない」
ユウキの間の抜けた声が辺りに響く。
ユウキは確かめるように体のあちこちを動かす。
どこにも異常は無いようだ。
「不発だったのか?」
「良かったユウキ様」
ユウキを強く抱きしめるメイ。
「はは、痛いよ。メイさん」
ユウキの無事を喜ぶ二人。
「グガガ、ゲゲゲ(馬鹿な。お前は一体・・・)」
がくっ、と魔物は事切れる。
呪いによって命を使い果たした魔物は塵となって消えた。
こうして事件は誰一人欠けることなく幕を閉じた。