最終話 勇者が姫を救う物語
神様は空にある小さな小さな世界から地上を見守っていました。
しかし、そんな神様の世界が崩れ去っていきます。
「あっ、あっ・・・」
神様が涙を流します。
嘘がばれてしまったのです。
勇者のついた嘘・・・ではありません。
神様がついた嘘がばれてしまったのです。
『スライムは生きている』
それは神様が自身のためについた嘘でした。
神様はありとあらゆる願いを叶える力を持っています。
しかし、それは神様以外の・・・あくまで他者の願いを叶えるための力です。
あろうことか、その力で神様は自身の願いを叶えてしまったのです。
これは決して許されることのない罪です。
神様は罰として願いを叶える力と・・・
自身が住んでいた空にある小さな世界を失いました。
「ご、ごめんなさい」
謝っても手遅れでした。
今、ここにいるのは何の力もない・・・ただの少女でした。
少女は消えていきます。
少女が住む小さな世界とともに。
でも、安心してください。
少女の住む世界が消えても・・・
あなたたちの住む世界には何の影響もありません。
だから、何の心配もありません。
あなたたちの平和な世界はこれからも続いていきます。
めでたし。
めでたし。
・・・。
・・・。
誰かがペンを走らせ続ける。
強い思いを込めて。
彼は物語をつむぐ。
・・・彼はこの悲しい結末を認めない。
フォザリア王国の王立図書館。
そこには隠された部屋があった。
その部屋の主は今は亡き・・・千年前の勇者である先代国王だった。
そこで彼は自身がついた世界を守る嘘を・・・
この世界を終わらせないための物語を書き続けた。
それは『勇者が魔王を倒す物語』。
この部屋の本棚にある無数の本は全て彼によって書かれた本だ。
この本ひとつひとつに彼の強い思いが・・・願いが込められていた。
千年に渡って書き続けられた『勇者の物語』は時代とともに少しずつ変化していった。
彼が最後に書いた本は『勇者が魔王を倒し、姫を救う物語』。
それは・・・
魔王を封印した勇者じゃない・・・
姫を救う勇者を・・・
願って書かれた本だった。
・・・。
「消させたりなんかしない!」
ユウキが少女の手をつかんだ。
『・・・!』
少女が驚いた。
そして、世界はまばゆい光につつまれ・・・
少女はたまらず目を閉じた。
「・・・」
少女が目を開けると・・・そこは草原だった。
周りにはユウキの仲間達がいた。
「・・・!」
少女は気づいた。
ユウキがずっと自身の手を握ってくれていたことに。
「迎えにきたよ。お姫さま」
・・・。
優しい神様を救いたい。
千年に渡った勇者達の願いは。
今ここに果たされた。




