第16話 スライムの鎧
呪い。
人の姿を変えるもの。
心を乱し操るもの。
呪いの種類は千差万別だ。
しかし、全ての呪いに共通している点が一つだけある。
それは盾や鎧を身につけていても防げないという点だ。
この世界に呪いを防ぐ手段は存在しない。
「スライム達を元に戻すには呪いをかけた張本人を倒すしかありません」
はっきりと断言するメイ。
ユウキ、メイ、ランドルフの三人は村人達を元に戻すための作戦会議を村の入り口で行っていた。
スライムに変えられた村人達は三人と一定の距離をとりながら話を聞いている。
これは三人に対して危害を与えるつもりが無いという意思の表れだった。
「本当に戦うしか無いのかな」
ユウキはアレスの鎧から出てきたスライムを抱き抱えながら呟く。
「・・・そうだ。人をスライムに変える呪いがあるならその逆。スライムを人に変える呪いもあったりしないかな?」
呪いをかけた術者と戦わずに済む方法を思案するユウキ。
「確かに、そういう呪いも存在はしています」
「だったら、それで・・・」
「無理だ」
ランドルフがユウキの案を一蹴する。
「呪いは早いもの勝ち。後から上書くことはできない。だから、今ここで呪術者を倒すしかねーんだよ」
呪いという事象について補足するランドルフ。
「ランドルフさんの言う通りです。それにここで術者を逃せば更なる被害者を生むことになります。覚悟を決めてください。ユウキ様」
逃げ腰のユウキに戦わなければならない理由を説明するメイ。
「うん、分かった。僕も戦う」
呪術者と戦う覚悟を決めるユウキ。
「とは言ったものの・・・呪術者に対する対抗策がねーんだよな。三人で一斉に突っ込むか?」
「村人全員をスライムに変えた相手です。無駄でしょうね」
「だよなー」
うーん、と頭を抱える二人。
呪いは防げないだけでなく、かわすこともできない。
呪術者が呪いを放ったら誰かが盾となって受け止めるしかない。
それができるのも二回まで。
最後の一人までやれたら終わりだ。
「えいっ」
ユウキが抱えていたスライムを胸にくっつけた。
「急にどうした?」
ランドルフがユウキに問いかける。
「えーと、全身をスライムで包んだら呪いを防げるかなって」
その言葉にメイが反応する。
「確かにスライム達にはこれ以上の呪いが効かないので・・・」
「いーや、駄目だ。村人達を危険な目に合わせらんねー」
反対するランドルフ。
しかし、そんなランドルフを他所にスライム達が三人に体を寄せてくる。
「どうやら、村人達はやる気満々のようですよ」
「うーん」
頭を悩ませるランドルフ。
そんなランドルフを無視してスライム達がくっついてくる。
そして、スライムの鎧で身を包んだランドルフが爆誕した。
「あー、もう分かった。ユウキの作戦で行くぞ」
スライム達のやる気に折れるランドルフ。
こうしてユウキ発案のスライムで身を守って呪術者を倒そう作戦が開始された。