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偽物勇者とメイド天使  作者: ああああいい
最終章 勇者編
147/169

第136話 最後の物語とその始まり

 フォザリア王国。

 地下牢の面会室。


「・・・!」


 ジャンヌは目の前の人物に驚いていた。


「何を驚いているんだい?呼び出したの君だろ」


 アルベルトが言った。

 ・・・変装はしていなかった。

 国王としてジャンヌに会いに来ていた。


「・・・騒ぎになるわよ」


 ジャンヌが言った。


「ふふ、そうだね・・・むしろ、そうなってもらわないと困るよ」


 アルベルトが笑う。


「・・・?」


 ジャンヌが疑問を浮かべた。


「それより、君が私を呼び出したってことは見つけたんだろ?」


 アルベルトが楽しそうにジャンヌを見つめる。

 まるで、新しいおもちゃを見つけた子供のように。


「ええ、これよ・・・」


 ジャンヌは自身が書いた本をアルベルトに渡した。

 アルベルトがその本を読む。


「すごいよ!これがあれば勇者が残した魔王の封印が解ける・・・私達は神の命題を成し遂げたんだ!」


 アルベルトが興奮しながら話す。


 ・・・千年前の勇者が残した四角い箱。

 魔王が封印されていると言われるその箱は・・・空っぽだった。

 魔王はいない。

 嘘だった。


 けれど、勇者が残した封印は本物だった。

 この封印は試練であり、鍵であり、目安だった。


『神を超えるという命題』


 この命題を成し遂げたものは神様のいる世界に行くことができる。

 そこで・・・神様に会える。

 封印を解いたとき・・・人は神を超えたことになる。


「牢獄に来てからそんなに経っていないのに、もう見つけるなんて・・・さすが、ジャンヌだ」


 アルベルトが喜ぶ。


「封印は解けないわ」


 ジャンヌが水を差した。


「最後のページを読んで」


 ジャンヌに言われ、アルベルトはページをめくる。


「網目状の結界?」


 アルベルトが本に書かれていた文字を読んだ。


「ええ、その結界は絶対に破れないわ」


 ジャンヌが言う。


「最後の結界には神の力が使われているわ」


 ジャンヌが説明する。


「ずっと、疑問だったの・・・」


 ジャンヌが続ける。


「どうして、封印を解くことが神を超えることにつながるのか」


 ジャンヌがため息をついた。


「封印には神の力が使われている・・・だから、封印をすべて解くということは・・・」


 ジャンヌが当然の事実を語る。


「神の力を打ち破るということ・・・それは、すなわち・・・」


 ジャンヌがアルベルト見た。


「神を超えたことになる」


 ジャンヌが解けない封印に関して語り終えた。


「なるほど・・・そういうことか」


 アルベルトが納得した。


「ジャンヌ・・・君はこの牢獄に来る前からこの事実に気付いていたんだね」


 アルベルトが言った。


「ええ。だから、私は別の方法で神を超えようとした」


 薬草の持つ願いを叶える力・・・

 その力で死者を蘇られせて神を超えようとした。

 そのために、この世界で最も強い生命力を持った生き物・・・

 ドラゴンの死体を使った。


「けれど、失敗した」


 蘇ったドラゴンは、本物の生きているドラゴンには遠く及ばなかった。


「・・・他の方法なんてなかった」


 ジャンヌが言う。


「勇者が残した封印を解く・・・それだけが神を超え・・・神に会う条件だった」


 ジャンヌがアルベルトを見た。


「今日、あなたを呼んだのは話す決心がついたから」


 ジャンヌの体が震える。


「・・・私達の夢は叶わない」


 ジャンヌの目から涙が零れ落ちる。


「私はその事実を伝えるためにあなたを呼んだの」


 ・・・子供の頃からずっと夢を見ていた。

 わき目もふれずにひたすら追いかけ続けた。

 けれど・・・その夢は絶対に叶わない夢だった。


 それはジャンヌにとってとても辛い現実だった。

 夢見る少女がようやく夢から覚め・・・


「大丈夫だよ。ジャンヌ」


 アルベルトが優しく慰める。


「だって、魔王の封印は解けるから」


 アルベルトが言った。


「えっ」


 ジャンヌが驚いた。


「これは先代国王からもらったものなんだ」


 アルベルトが自身のつけている太陽のペンダントを指さした。


「このペンダントに宿った姿を変える力は他でもない・・・神の力だ」


 アルベルトがジャンヌを見る。


「この力で最後の封印を解く」


 アルベルトが言った。


「ありえないわ・・・」


 ジャンヌが驚きながら言った。


「本当さ・・・現に先代の国王はこのペンダントの力で姿を変えながら千年の時を生きた」

「・・・!」


 ジャンヌがその言葉に黙る。

 そして、ゆっくり口を開いた。


「先代国王はどうしたの?」

「死んだよ」


 アルベルトが答えた。


「あなたが殺したの?」

「そう思うかい?」


 アルベルトが聞き返した。


「あなたは人を殺せるような人間じゃない・・・」


 ジャンヌが言った。


「・・・そうだね」


 目を伏せながらアルベルトが言った

 人なら殺している・・・何よりも大切な友人を死なせた。


(私が殺したようなものだ・・・)


 後悔はいつまで経っても消えることはなかった。

 ・・・アルベルトがジャンヌに向き直る。


「先代国王は自ら命を絶った」


 アルベルトが話す。


「彼は死ぬ前に言った」


『お前に私の夢を託そう』


「・・・もう、私だけの夢じゃないんだ」


 ・・・先代国王の夢は教えてもらえなかった。

 けれど、彼は言った『託す』と。


(ならば、その夢は・・・私と同じはずだ)


 アルベルトが立ち上がった。


「私は果たすよ。『世界平和』という夢を」


 アルベルトがジャンヌを見下ろす。


「今日はお別れと、君にお願いをしにきたんだ」


 アルベルトが言う。


「ランドルフに伝えてくれ・・・決戦は一週間後だ」


 アルベルトが続ける。


「私は地下の・・・封印された四角い箱の前で君を待つと」


 アルベルトが伝言を残す。


「何人連れてきてもいい・・・勇者に仲間はつきものだからね」


 アルベルトが地下牢を去る。


「待って、アルベルト!」


 ジャンヌが呼び止めた。

 しかし、アルベルトは止まらなかった。


 この日、国王アルベルトはフォザリア王国の人々の前から姿を消した。

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